Apple UXライティングチームとのQ&A

グリッド線のある黄色の背景にある長方形のボックス内の鉛筆アイコン。

テキスト要素の役割は大きく、特にアプリやゲームでは、適切な言葉遣いがユーザー体験に大きく影響します。WWDC23の開催期間中、Apple UXライティングチームは技術的な概念から始まり、インスピレーションをもたらすコンテンツ、アプリに「個性」を持たせる必要性についてなど、幅広いトピックに関してQ&Aセッションを行いました。今回、このQ&Aの抜粋と、ユーザーインターフェイスのライティングをさらに深める上で役立つリソースをいくつか紹介します。

インターフェイスのライティング

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自分のアプリでは大量のテキストを使っています。文章を読みやすくするベストプラクティスについて教えてください。

「この文章を使って何を達成したいのか」ということをまず自問してください。その答えに沿って、文章作成に取り組みます。まずは各段落を、一つひとつの文章に分けます。そしてはじめに戻り、各文章を可能な限り短く、インパクトのあるものにしていきます。体言止めなどを使って文章のスタイルを揃えたり、見出しを加えて文章を分割したりするなど、さらに工夫を加えることもできます。別の言い方をすれば、次のようになります。

各段落を、一つひとつの文章に分けます。

各文章を可能な限り短く、インパクトのあるものにしていきます。

動詞や体言止めなどを使って文章のスタイルを揃えます。

他のオプションも心に留めておきましょう。場合によっては、動画やアニメーションを使って要点を伝えたほうがよい場合もあります。最初に簡潔な結論を記述し、その詳細を別の場所に記載することもできます。そうすればアプリを初めて使用する人にわかりやすく説明しながら、もう少し詳しく知りたい人に対してより適切なオプションを提供することができます。

技術的な概念を簡潔な表現で説明するためのアドバイスがあれば教えてください。

まず、理解の度合いが誰でも自分と同様だと思わないことです。技術的に詳しい説明に注意が行き過ぎて、初めてアプリを使用する人の存在を忘れてしまうことがあります。

その概念について、まずは友人や同僚に説明してみたり、機能の簡単な概要をエンジニアにたずねてみたりしてみましょう。

そこから概念を個々の要素に分割し、絶対に必要とは言えないものをカットしていきます。技術的な概念は、長文で説明すると一層理解し難くなる可能性があります。サポートページへのリンクを加えられるでしょうか?その情報をその時点でユーザーに伝える必要があるか、検討しましょう。一度に提示する情報量を少なくすることが、常に大事な第一歩になります。

「少ないほどよい」という概念を、ユーザーの混乱を招かずに使うにはどうすればよいでしょうか?

明瞭であることが常に第一優先です。コツは、常にできるだけ短くするよう心掛け、必要な説明だけを加えた長さに収めることです。はじめにすべてを書き出してみて、数日間寝かせておきましょう。その後あらためて見直すことで、何を省略すべきかがより明確になるはずです。

その他のヒントとして、いくつかの鍵となる短い言葉を探すことが挙げられます。多くの場合、これらの言葉が文章を引き締めるきっかけになります。

オンボーディングのライティングについて、どのようにアプローチすればよいですか?

これは当然、デベロッパのアプリやゲームによって異なります。何が必要で何が適切であるかをデベロッパそれぞれが理解する必要があります。ですが通常、特にユーザーがその体験に踏み出そうとする最初の段階では、テキストに関しては簡潔さが重要になります。

アプリを使用すべき理由とアプリの使用感をユーザーが理解できるように、主要な機能の概要を手短に説明するようにしましょう。また、ユーザーがどのように現時点に辿り着いたのかも考慮しましょう。アプリを開く前にどのようなテキストが表示されたのか。App Storeにはどのようなテキストが表示されたのか。それらすべてが体験に影響します。

Human Interface Guidelines: Onboarding

UXライティングはパーソナルな文体にするべきでしょうか?そうするとローカライズが難しくなるでしょうか?

文のスタイルや文体を決めるときは、定義が難しい「キャラクター」のニュアンスを加味するため、個性的な要素を加えるべきです。その一方、ご質問の通り、他言語へのローカライズも考慮する必要があります。ローカリゼーションパートナーと協力してローカライズできれば理想的です。慣用句に頼りすぎずに、自分らしい文体で表現できるフレーズを探しましょう。個々の表現の積み重ねで全体のトーンが決まります。

特にジェンダーに関して、インクルーシブな表現をするにはどうすればよいですか?

これはデザインにおいて、誰にとっても非常に重要なポイントです。提供する体験で、ジェンダーを指定する必要があるかどうか検討してください。ジェンダーの指定が必要な場合は、質問に答えないというオプションも含めて、包括的なオプションを提供することが重要です。多くの内容はジェンダーを示唆することなく記述することができます。そのため、さらにインクルーシブな表現が可能になります。グリフを使うことも効果的です。SF Symbolsにはインクルーシブなオプションが多数用意されています。インクルーシブなライティングに関するさらに詳しい情報は、ヒューマンインターフェイスガイドラインで確認できます。

Human Interface Guidelines: Inclusion

有益な通知を書くためのベストプラクティスを教えてください。

まず、ユーザーは日々たくさんの通知を受け取っており、通知が邪魔に感じられる可能性があることに留意しましょう。通知を書く前に、次のことを自問してください。

  • このメッセージは今すぐ送信する必要があるか。
  • このメッセージにより、アプリを起動する手間が減るか。
  • このメッセージにはユーザーにまだ伝えていない内容が含まれているか。

これらの質問すべてに「はい」と答えられる場合は、ヒューマンインターフェイスガイドラインで通知に関するベストプラクティスの詳細を確認してください。

Human Interface Guidelines: Notifications

TipKitフレームワークでのライティングに関するアドバイスがあれば教えてください。

ユーザーがアプリの機能を把握するために役立つヒントを表示するTipKitでは、簡潔な記述が鍵になります。ヒントを使って、アプリの新しい機能を強調して示したり、ユーザーが隠れた機能を見つける手助けをしたり、タスクを迅速に行う方法を示したりすることができます。ヒントで提供するアイデアは1つに限定し、強調している機能について可能な限り明確に示します。

コンテンツの質を高めるための提案を1つ挙げるとしたら、どのようなものになりますか?

できるだけ完璧な文章にする方法の1つは、他のライター、デザイナー、クリエイティブパートナーなど、他の人にその文章を見てもらうことです。それができない場合は、そのアプリに関わっている他のスタッフや、可能であればカスタマーに文章を見てもらいましょう。また、自分で声を出して読むことも有効です。文章を会話調にしたり、不要な言葉をカットしたりする優れた方法になります。