サウンドへのアドバイス

Please, Touch the Artwork:ジャズ的なもの

Thomas Waterzooiによるエレガントなパズルゲーム、Please, Touch the Artworkは、オランダの画家Piet Mondrianにインスパイアされています。この画家は、直線、四角形、原色を使用する特徴的なスタイルで、20世紀の抽象芸術のパイオニアとして知られています。このようなスタイルを好む人には、それに似合った音楽が必要です。

「Mondrianなら、工房で絵の制作中にどんな曲を聴くだろうかと想像してみたんです」と、ブリュッセルを拠点とするこのゲームの開発者であるWaterzooiは言います。「きっとジャズを聴いていたでしょう。しかも、このゲームはリラックスできるようにデザインしたので、落ち着いていながらダイナミックな感じのジャズでなければならないでしょう」。

時代を超えたアートとクールなサウンドトラックにより、Please, Touch the Artworkの上品な雰囲気が生み出されたのです。このパズルゲームは、Mondrianの最も有名な作品のうち、「赤・青・黄のコンポジション」「ブロードウェイ・ブギウギ」「New York City I」の3つが元になっています。

パズルが大きくなり、変化するにつれて、音楽も変わっていきます。これは作曲家、Lars Burgwalの作です。「New York City」編の音楽はベースのみで始まり、各パズルの進行に合わせてピアノ、サックス、ビブラフォンが演奏に加わります。(Waterzooiはドラムの音も追加しています。これはいつでも絵をタップすると聴くことができます)「パズルゲームですから、音楽はリラックスできるものでなければいけません」と、Waterzooiは言います。「どの場面でもいらだたせてはいけないのです」。

では、「ブロードウェイ・ブギウギ」ではブギウギを使わないということでしょうか? 「テンポが速過ぎますね!」と、笑ってWaterzooiは言います。「あれではついていけなくなるでしょう」ただし、ブギウギを考慮したスタイルも少し盛り込まれています。

「このゲームは、『ブギー』と『ウギー』というキャラクターを一緒にするのが目的なんです」と彼は言います。「また、これに成功すると、小さな完成アニメーションと共に音楽が鳴ります。3〜4音とごく短いですが、ブギウギピアノの右手スキームが元になっています」。

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Odio:最高の空間オーディオ

オーディオAppにおいて、Odioを超える没入感を持つものはありません。Apple Design Awardsを受賞したこの3DオーディオAppは、空間オーディオとヘッドトラッキングを組み合わせ、ARサウンドスケープを作り出します。

流れ落ちる滝や深海など、落ち着いたデジタルアンビエンスの世界を行き来することができますが、それは、このリアルな世界を受動的に聴くことだけにとどまりません。それぞれのサウンドスケープは、スライダーを操作することで、川の流れ、夢のような鯨の歌、デジタルの電気音など、それぞれの音の要素を頭の周囲360度に配置し直すことができます。

Max FrimoutがこのAppのオーディオエンジニアです。作品では、人工的で異世界のようなデジタル要素を多用していますが、彼の音に関するキャリアは、もっとアナログなものから始まっています。「私はもともとハープ奏者でした」と彼は言います。「ある日、Logic ProでES1シンセサイザーを開いたんです。そして気がついたらこんな所にいました!」。

Odioは、本来自然音に特化していましたが、開発開始から数ヶ月が経った時点で、オランダに拠点を置くVolstのチームはさらなる可能性を求めました。「『ミュージシャンに自分たちの環境を曲で表現してもらったらどうなるだろうか?』と考えたんです」と、Roger Kempは述べています。彼は、Volstの共同設立者兼デザイナーです。「その時すべてがつながりました」。

Frimoutは、このAppに関わる5人の作曲家の1人でもあります。ミュージシャンとDJを生業としている彼は、このOdioのサウンドスケープを作り始めました。いくつかのメロディーラインを作り、そこに「人工の水」「動くコード」「フィルターされたドローン」という名前の効果を重ね、彩りを添えました。サウンドスケープはLogic Proで作成し、AirPods Maxでテストしています。「そうやって聞いた感じを確認しているんです」と彼は言います。

ほとんどのFrimoutの曲は、音の実験を行った成果ですが、「Wow!」というサウンドスケープは、より有機的な経路で生み出されました。「その夜に思いついた一連のメロディーから作曲を始めました」と彼は言います。「このような設備をそろえ、コンセプトを用意しておいても、大きなインスピレーションを与えるのはたった1つの出来事だ、ということです」。

また、ここでもハープが使われています。これはFrimoutが演奏し、「Heartbreak」と呼ばれるループになっています。ただし、聞いても弦楽器だとはわからないかもしれません。「3つの和音で構成されているだけなんです」と彼は笑って言います。「ただ、何回も何回も処理を重ねましたが」。

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A Musical Story70年代のあのゲーム

A Musical Storyは、とてもグルーヴィーだった時代にインスパイアされています。「70年代の音楽が持つ自由さがテーマです」と、Charles Bardinは述べています。彼はフランスの作曲家兼開発者で、アートディレクターのAlexandre Rey、作曲家のValentin Ducloux、開発者のMaxime Constantinianと共にこのゲームを制作しました。「大きく影響を受けたのは、当時の『どんな事でも起こりうる』という感覚です」。

2017年に構想され、2022年3月にリリースされたA Musical Storyは、歌、物語、アートが組み合わされたハーモニーです。ここでは、ビンテージのギター、衣装、ヘアスタイルに身を固めた、新進気鋭のバンドがブレイクを目指すストーリーが描かれます。物語を進めるにはビートに合わせて画面をタップするのですが、するとソウルやR&Bの要素を取り入れた素晴らしい音楽が聞こえてきます

このゲームではほとんど言葉を使いません。単純ながらパワフルな、音楽と記憶の結びつきが原動力になります。これはBardinにとって理想的なプレイグラウンドです。彼はリヨン高等音楽院で学び、10年以上にわたり、ゲームミュージックの制作やカバー演奏に携わってきました。

面白いことに、この開発プロセスの発端は曲ではありませんでした。BardinとReyは、演奏に合わせてタップする、円形の構造を作ることから始めたのです。「ほとんどのゲームでは、画面に降りてくる音符に合わせて演奏するようになっています」とBardinは言います。「それもいいのですが、あれは音を聞かなくてもプレイできてしまいますよね。本当に聴くことに頼らなければならないゲームが欲しいと思いました」。

構造の目処が立ったら、こんどは音楽自体に取りかかる時です。「ストーリーをアンロックするために、短い音楽の一節が必要なのはわかっていました」と、Bardinは言います。「しかし、多くの音楽ゲームでは、電子音楽やテクノミュージックに見られる、極めて明瞭なビートに依存しています。私たちは、ドン、ドン、ドン、ドンというリズムだけではなく、もっと有機的な音楽を作れることを証明したいと思いました」。

彼はまた、音楽が物語を進めていくようにしました。「『Her』という曲は、主人公がパブに行き、音楽を演奏する女性を見て、一目で恋に落ちる場面のために書きました」とBardinは言います。「最初はローズ・ピアノとベース、ドラムのみが聞こえるのですが、ステージに近寄っていくと、もっとよく音楽が聞こえるようになります。目一杯近づくと、彼女の顔や声がわかるようになっています」。ボーカルがゲーム中に登場するのは、クレジットを除いてはこの時のみです。「この瞬間をパワフルなものにしたかったんです」とBardinは言います。「これがゲームの中で最も重要なキャラクターの声ですから」。

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Headspace: マインドフルネスの音楽

瞑想とマインドフルネスのAppで、ユーザーの集中、リラックス、精神統一、入眠などをサポートするHeadspaceは、ここ数年一流の音楽アーティストとの提携を行っています。Focus Music(その名の通り、「Focus」のタブにあります)では、Arcade Fire、St. Vincent、Erykah Badu、Madlibなどのアーティストや、映画音楽作曲者のHans Zimmerなどによる、オリジナルミュージックやプレイリストがずらりと並んでいます。

Focus Musicのデザインの一部は、John Legendが担当しました。彼はAppの主任音楽担当者です。「スマホにはたくさんの可能性が詰まっています」とLegendは言います。「アーティストの中には、それに恐怖を感じる人もいるかもしれません。今まで慣れ親しんだものとは違うからです。でも、その可能性を活かせば、さまざまな形で人々にアプローチできるようになります」。

シンガーソングライターのAlunaは、リフレクソロジー、超越瞑想、太極拳を学び、そのスキルをHeadspaceの1時間の曲に織り込みました。彼女はこの曲を制作するために、パチパチと音を立てるキャンプファイヤー、昼下がりのにぎやかな公園、水滴の落ちる洞窟など、特定の空間に関係したサウンドによる、6分間の音のブロックをデザインしました。

厳密に言うと、これは彼女のいつもの制作手法ではありませんでした。「普通、曲を書く時は、言葉遊びをしながら動きを求めていくものです」と彼女は言います。「終わりも始まりもない1時間の音楽とはまったく違います」(また、考えるよりもずっと複雑です。洞窟で水滴が落ちる音と、蛇口から水が滴る音とでは相当な違いがあるからです)。

音楽とマインドフルネスが交わる点は科学により明らかにされていると、カリフォルニア大学バークレー校の認知神経科学教授、Sahar Yousefは述べています。彼女は、HeadspaceのFocus Musicに協力しています。「リハビリの施設で音楽を流すと、回復が早くなることがわかっています」とYousefは言います。

音を聴いている時に何が起こっているのか、かいつまんで説明します。あなたの脳は、神経ネットワークを通じて、すべての思考を構成する小さな電気信号のつながりを構築します。嬉しいことに、これらのネットワークはコントロールすることができます。しかも、おそらくあなたは今それを実行しているのです。コーヒーの香りがすると目覚める時間だと思うのと同様、デザインされた音楽を認識すると気持ちが落ち着くように脳を訓練することができるのです。

つまり、これらのサウンドスケープは、ちょっとしたライフハックの役割を担っているということです。「Michael Phelpsは、いつもレースの前にEminemを聴いていたそうです」とYousefは言います。「これとまったく同じことです」。

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Behind the Design: Odio

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