新時代のハンドルを握るJigSpace
2023年11月9日
エンタープライズ向けApple Vision Proアプリ
これは、JigSpaceがApple Vision Proのために作成した初期の画像の中で、特に印象的なものの1つです。ダークチェリーレッドのF1カー、アルファロメオC43が実物と同じ大きさで映し出されています。室内に現れた車は、周囲からの光を反射しています。カメラが車のフロントウィングから遠ざかるように動き、美しいアニメーションがウィングとボディの上の空気の流れを描きます。
コラボレーションを実現するクリエイティブ企業、JigSpaceは、アルファロメオの協力を得てこのモデルを作成しました。JigSpaceの共同創業者兼最高技術責任者であるNuma Bertron氏は、このプロジェクトを始動時から主導してきましたが、実際に車が空間環境に映し出されるのを見るまでは想像ができなかったと言います。「誰もがまず、車に乗ってみようとしました」とBertron氏は話します。「実際には通り抜けてしまうのですが、全員が車に乗り込もうとしていました。」
このF1カーは、visionOSを使ったJigSpaceの壮大な計画の一部にすぎません。JigSpaceは、新しいプラットフォームを活用して、以前には考えられなかったような創造と共同作業の手段を生み出しています。
Bertron氏は、JigSpaceの代表的な「ジグ」(空間表現を意味するJigSpaceの用語)の1つとして、驚くほど精巧なジェットエンジンのモデルを挙げています。「iPhoneでもARモデルを拡大して素晴らしい画像を見ることができますが、それはあくまでも画面上の映像です」とBertron氏は説明します。Apple Vision Proでは、実物大のエンジンが轟音を上げながら回転します。車の周りを歩いたり、中を通り抜けたり、以前は想像もできなかったような細部まで見たりすることもできます。
「私たちの仲間の1人であるベテランの3Dアーティストは、自分が作ったモデルが空間に大きく映し出され、その周りをハンズフリーで歩き回ることができた時、涙が出たと言っていました。」とBertron氏は語ります。
私たちは、誰でも使えるツールでこのF1のジグを作成しました。
Numa Bertron氏(JigSpace共同創業者兼最高技術責任者)
これを実現するには、ある程度の背景知識が必要でした。visionOS向けの開発を始めるまで、Bertron氏にはSwiftUIに関する経験がありませんでした。「私たちにはXcodeに関する経験がなかったので、SwiftUIとRealityKitについて学び始めました。正直なところ、多少の苦労はあるだろうと予測していました。しかし実際にはすべてがあらかじめ設定されており、角丸、ぼかし効果、スムーズなスクロールといった機能をすぐに使うことができました。」
iOSでJigSpaceを使用したことがある人は、visionOSバージョンも同じようなものだと思うかもしれません。しかし、実際のユーザー体験にはまったく異なります。「私たちは、目の前に現れる物体の大きさはどれくらいが適切かを考えました」とBertron氏は話します。「どうすれば快適に感じられるか?机の上と床の上、どちらにモデルを映し出せばよいか?空間コンピューティングはこれまで以上に多くの機会をもたらしてくれます。同時に、判断すべき事項も増えます。」
F1の事例では、視覚的なレベルアップも可能になっています。「これほど大きな物体の場合、小さなデバイスで細部まで忠実に再現することは不可能でした。そのため常に妥協が必要でした」とBertron氏は語ります。visionOSでは、細部を自由に追加することできます。「プロトタイプを見て、『まだ大丈夫そうだから、テクスチャのサイズを2倍にして、ネジやエフェクトを追加しよう』という話ができるようになりました。」(機能だけでなく、楽しさも増加します。例えば、実物大のタイヤなど、車の一部を取り外して、頭の上から後ろに放り投げることもできます。)
視覚上の素晴らしい成果のほかに、共同作業の新たな形も生まれています。「私がタイヤを指差すと、相手には私の姿が見えます。その人がどこにいても関係ありません」とBertron氏は言います。「私がハンドルを握ることも、誰かに任せることもできます。修正が必要な箇所に丸を付けることも、メモを残すことも、音声録音もできます。これは本格的なコラボレーションプラットフォームです。」さらに、これはF1ドライバーや航空宇宙のエンジニアだけでなく、誰でも使うことができるツールです。「私たちは、誰でも使えるツールでこのF1のジグを作成しました。」
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あらゆる種類や規模の企業が、Apple Vision Proの無限のキャンバスの可能性を探り、これまでは不可能だったアイデアを実現しています。