ビジョンを形にする:djayにおけるvisionOS向けのデザイン
2024年1月11日
Algoriddimの共同創設者でCEOのKarim Morsy氏は、プロのDJとしてキャリアを始めた頃、イタリアの海岸にある城塔の上でパフォーマンスを行っていました。下に見える城の古跡では人々が踊り、目の前には月明かりが降り注ぐ海岸線と地中海が広がっていました。Morsy氏はとても控え目な表現で、「とても心が動く光景でした」と語ります。
Morsy氏とAlgoriddimは、この時のライブDJ体験を再現しようと、アプリ「djay」を通じて20年近く取り組んできました。クラス最高水準のDJアプリであるdjayは、Mac向けのボックスソフトウェアとして誕生し、iPad向けの後継バージョンではバーチャルターンテーブルやビートマッチングなどの機能が提供されました。アプリは大成功を収め、2011年と2016年に、それぞれApple Design Awardsを受賞しています。
しかしMorsy氏は、これまでの道のりはすべて、無限のキャンバスに描かれるdjayに向けたプロローグに過ぎなかったと話します。「Apple Vision Proについて聞いたとき、まるで檻から解き放たれた野獣のようにdjayのパワーを解き放てると感じました」とMorsy氏は語ります。Algoriddimと私のビジョンは、誰もがDJできるようになることです。そしてApple Vision Proは、その夢を形にすることを意味しています。初めてデバイスを体験した時は、本当に感動しました。私は子供の頃からDJになりたいと思っていました。そしてあれよという間に、ターンテーブルや夜空、頭上に広がる空一面の星々、そして砂漠でのライトショーなどが現れたのです。私は『これこそがすべての集大成だ』と感じました。『これが私が人々に体験してもらいたかった感覚なのだ』と。」
Apple Vision Proについて聞いたとき、まるで檻から解き放たれた野獣のようにdjayのパワーを解き放てると感じました。
Karim Morsy氏、Algoriddim共同創設者兼CEO
その集大成に達するには、Morsy氏は「人生で最もワイルドな全力疾走」が必要だったと言います。360度のキャンバスを探索しながら、チームは人々がdjayを扱うプロセス全体を一から考え直しました。Morsy氏は次のように話します。「私たちは10年かけてDJのインターフェイスを構築してきましたが、多くのものがあって当然だと思い込んでいたことに気づきました。そのため、Apple Vision Proのデザイン初期には、製図板に立ち返り、『これは10年前のコンピューターとマウスの時代には意味があったかもしれないが、今必要な理由はあるだろうか?テンポを合わせるためになぜボタンを押す必要があるのか。シームレスにすることはできないか?』と自問しました。取り除けることが数多くあったのです。」
彼らは環境についても考えました。djayは、ウインドウ表示、ユーザーの環境で3Dターンテーブルを使用するための共有スペース、そしてさまざまなフルイマーシブの体験を提供しています。最初に開くのはウインドウビューです。iPadアプリでdjayを回したことがあるユーザーにはお馴染みの、2つのデッキからなるシンプルなUIです。ボリュメトリックビューでは、ターンテーブルに加えて、アプリの重要な機能、つまりdjayのエフェクトコントロールパッドとして機能するフローティング3Dキューブを使うことができます。
Morsy氏は、こうしたイマーシブなシーンでこそ、ユーザーは自身の環境に対応し、真にその環境を生かすことができると感じています。再生中の曲のアートワークの色が反映されるLEDウォールや、光のアリーナに囲われた夜の砂漠のシーン、さらにはロボットが踊り、地球の素晴らしい景色を眺めることができるスペースラウンジなどを体験できます。こうした環境は、ライブDJが求める「フロー状態」を生み出すことを目指すためのものです。「ユーザーは、環境が自分に影響を与える、あるいはその逆のループに入ることを望んでいるのです」とMorsy氏は言います。
こうした驚くようなテクノロジーの使用は、愛する音楽と通じ合う、という非常にシンプルな目的に集約されます。自身もミュージシャンであるMorsy氏は、オフィスに置かれたピアノを指さして次のように話します。「あのピアノは、何百年もの間同じインターフェイスを保っています。複雑さと使いやすさの最適な組合わせ、それが私たちが目指すものです。Vision Proのdjayでは、多様な機能を提供することより、特別な体験をしてもらうことに主眼を置いています。」