Knotwords:2人のクリエイターが立つ言葉の交差点

多数のボードゲームが置かれた棚の前のスタジオに立っているZach Gage氏(左)とJack Schlesinger氏。

Knotwordsを開発したクリエイターのZach Gage氏とJack Schlesinger氏によるクロスワードパズルのアレンジは絶妙であり、きっと2人は長年にわたるクロスワードの達人であり、新たな挑戦としてこのゲームを作成したのだろうと思いがちです。

しかし、その認識は誤っています。

Gage氏は笑いながら話します。「クロスワードに夢中だったわけではありません。(このプロジェクトに)無理やり自分を引きずり入れる必要がありました。」

『どれだけランダムな言葉が隠されているのか』ということではなく、『プレイヤーとしてどのような判断をするのか』が重要なのです。

Knotwords、Jack Schlesinger氏

Gage氏とSchlesinger氏は実際に、Apple Design Awardsのファイナリストに入賞したKnotwordsと、そのApple ArcadeバージョンであるKnotwords+を制作しましたが、それはクロスワードパズルに革命を起こすためではなく、クロスワードをもっと学ぶためでした。Schlesinger氏は次のように話します。「クロスワードの人気が高いことはわかっていましたが、むしろ何が足りないのかを探りたいと考えたのです。」その結果、彼らは新しいゲームを生み出すだけでなく、言葉のゲームのデザインにおける成功の秘訣に直接たどり着くことができました。「『どのようにランダムな言葉が隠されているか』ということではなく、『プレイヤーとしてどのような判断を下すのか』が重要なのです。」

キーボードの上に表示された、ほぼ完成したKnotwordsのゲーム画面は、小さなクロスワードパズルに似ている。

Gage氏とSchlesinger氏は長年にわたるデザインパートナーです。Schlesinger氏はGage氏とともに「Knotwords」や「Good Sudoku」をデザインし、2020年の「SpellTower」の再リリース版や、Apple Arcadeのゲーム「Card of Darkness」のデザインにも貢献しています。両氏は、一般的なキャリアパスでゲームデザインの仕事にたどり着いたわけではありません。Gage氏にはインタラクティブアートの経験があり、Schlesinger氏はプログラミングのスキルを持ち、演劇、特にロックオペラを手掛けた経験があります。実際、2人が手掛けたゲームの多くでは、Schlesinger氏が見事なサウンドトラックを提供しています。両氏とも、ゲームの開発プロセスと同じくらい、その背景にある理念について多くを語ります。

シンプルなゲームの醍醐味はシンプルなルールにある、という印象を持っていましたが、実は、優れたパズル生成アルゴリズムこそがゲームの醍醐味を生んでいたのです。

Zach Gage氏

Gage氏は次のように説明します。「クロスワードでは、プレイヤーはヒントを探すことだけに集中します。マス目に注目することはありません。ですがクロスワードを制作する側では、常にマス目のことを考えます。そこで、プレイヤーにクロスワードを解くよう求めるのではなく、マス目を再構築してもらう方法はないかと考えたのです。」

Knotwordsでは、マス目の特定のセクションにある特定の文字のみを使うことができます。これはよいアイデアでしたが、当初はその調整が難しく、拡張性を持たせることも困難でした。Gage氏は話します。「最初はアイデアがまとまらなかったので、休憩して『Good Sudoku』を作りました。ルールはシンプルなのに極めて複雑なゲームであるSudokuを深堀りすることが、Knotwordsの開発を再度進める上で非常に重要であることがわかりました。」Gage氏は言います。「シンプルなゲームの醍醐味はシンプルなルールにある、という印象を持っていましたが、実は、優れたパズル生成アルゴリズムこそがゲームの醍醐味を生んでいたのです。」

Knotwordsの初期プロトタイプでのテスト:いくつかの文字のみ入力された手書きのKnotwordsパズルと、その横に並ぶ、1文字ずつ入力された8つのタイル。

彼らは、これらのタイルをただ無造作に配置していただけではありません。ある時、Schlesinger氏が手を上げたのです。「2時間以内にKnotwordsのジェネレーターを作るよ」と。Schlesinger氏は笑いながら回想します。これは少し野心的すぎたかもしれません。実際に最初のバージョンができ上がるまでに8時間かかりました。彼自身、あまり自慢できる出来ではなかったと言います。でも、これが貴重な学習の機会になりました。「プレイヤーの視点を考える必要があると気がついたのです。プレイヤーだったらどうするのか?どのような手順を踏むのか?間違えた場合、修正するまでどれくらいの時間がかかるか?などです。」つまり、パズル生成アルゴリズムには、ルールだけでなく、プレーヤーの行動も考慮する必要があったのです。

2人はこの作品を通じて、なぜクロスワードが好まれるのかの理由をつかむことができました。また、Gage氏の長年にわたるゲームデザインの理念の1つを反映することで、さらに改善することができました。Gage氏は言います。「私にとってゲームの唯一の楽しみは、上達していくプロセスです。制作したすべてのゲームで、プレイヤーのジャーニーを最も重要だと考えてきました。どうすれば彼らのジャーニーを楽しいものにすることができるか、ということです。制作者がゲームをプレイしたことがなくても、その答えは簡単に見つかることがわかりました。」

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「デザインの舞台裏」は、Apple Design Awardsの各受賞者がどのようにデザインを実践しているか、またその哲学を探っていくシリーズです。賞を獲得したアプリやゲームのデベロッパやデザイナーが、どのようにしてその素晴らしい作品に命を吹き込んだのか、ストーリーごとにその舞台裏を覗いていきます。