「これまで開発した中で最高のバージョン」：FantasticalがApple Vision Proに登場
2024年2月8日
クラス最高水準のカレンダーアプリ「Fantastical」は、誕生してからの10年以上の間に数多くの賞を獲得しており、iPad、iPhone、Mac、Apple Watchを使った時間管理に長けた大勢のファンに愛されています。そしてなお、「Fantastical」の開発元Flexibits社のCEO兼リードプロダクトデザイナーであるMichael Simmons氏は、そのApple Vision Pro向けアプリを「これまで開発した中で最高のバージョン」だと語っています。私たちはSimmons氏に、visionOS向けの開発の中で学んだこと、デベロッパラボに参加した体験、さらに、Vision Pro向けにアプリを展開するデベロッパに向けたアドバイスについて伺いました。
「Fantastical」をiPadからApple Vision Pro向けに展開する際、どのようなアプローチを取られたのですか？
私たちは最初に、プラットフォームを十分に調べ、カレンダーアプリとの相性について確認しました。「このプラットフォームで何か本当の改善と言えるようなことができるか」を考えたのです。その答えが「できる」だったので、次に「どのような可能性があるか」を検討しました。もちろん、visionOSには無限の可能性があります。決まった枠の中に制限されることなく、広大なキャンバスでアプリを制作できます。
私たちは、その無限に広がるキャンバスを活用しようと考えました。同時に、「Fantastical」をvisionOSでも慣れ親しんだ感覚で使えるようにすることも必要でした。人々は、人間味が感じられるデザインを好む傾向があります。特に当社プロダクトの場合はそう言えるでしょう。一部のユーザーは10年以上も当社のプロダクトを使い続けてくれているのですから。そこには受け継がれているものがあり、これから登場するプロダクトについても、当社が長年提供してきたプロダクトとのつながりが感じられるだろうというユーザーの期待があります。
私はギターを弾きますが、これは楽器を習得するのと似ていると感じました。
Michael Simmons氏、Flexibits社のCEO兼リードプロダクトデザイナー
最終的に、すべてが本当にシームレスに感じられる出来栄えになりました。そのため「Fantastical」の作業が完了するとすぐに、「今度は『Cardhop』（同社の連絡先アプリ）についてもやってみよう！」という声が上がりました。
「このプラットフォームについて何かを本当につかんだ」と気づいた瞬間はありましたか？
その瞬間はすぐにやってきました。私はギターを弾きますが、これは楽器を習得するのと似ていると感じました。楽器を弾いていると、ある日に突然、曲、音、リズムがピタッと決まり、「自分のものにした」と感じられることがあります。私の場合はそのとき、天才音楽家が自分の中から音楽があふれ出てくるのを感じる映画のシーンのようだ、と思いました。
visionOS向けのデザインには、どのように取り組みましたか？
フォントやボタンなど、画面要素の見やすさに重点を置きました。たとえば、不透明な背景は他のオペレーティングシステムの要素とうまく調和しなかったため、微調整しました。デザイン言語との一貫性を保つように努め、システムが提供する色を活用しました。また、主にUIKitを使ってUIを構築し、オーナメントやApple Vision Pro特有の凝った要素にはSwiftUIを活用しました。コードを大幅に書き直すことなく、アプリを素晴らしい見た目にまとめられたことは驚きでした。
プロセスにはどのくらいの時間がかかりましたか？
初めてデバイスに触れてからアプリを美しく仕上げて提出するまでに、5か月かかりました。UIの確認、フィージビリティ調査、ツールとフレームワークの理解といった準備に約3か月かかり、全体的な仕上げ、細部の調整、テストにさらに2か月かかったことになります。これは驚くほど短い期間です。こうしてプラットフォームの知識を習得した結果、「Cardhop」の作業はわずか2か月で完了しました。つまり、この知識とiPadアプリがあれば、数か月程度でApple Vision Proバージョンのアプリが作成できると思います。
iPhoneやiPadのアプリをApple Vision Pro向けに展開しようとしているほかのデベロッパに、どのようなアドバイスを送りますか？
ご自身のアプリがこのプラットフォームに適しているかを確認してください。このデバイスのすべての機能と可能性を確認し、制限のない空間でアプリがどのように感じられるかをよく検討しましょう。これらの点で問題がなく、iPad、iPhone、またはMac向けの開発実績がすでにあれば、Apple Vision Proに向けたアプリの展開は決して難しくありません。