Klemens Strasser氏が「Art of Fauna」でインクルージョンを優先した理由
2026年9月1日

Klemens Strasser氏はAppleと深い関わりがあります。オーストリアでコンピュータサイエンスを学んでいた2015年、教育アプリ「Elementary Minute」で学生部門のApple Design Awardsを受賞しました。その後も、レトロなボードゲームを集めた「Ancient Board Game Collection」や、本の管理に役立つ「PocketShelf」など、注目度の高いプロジェクトを次々と手掛けています。
デベロッパとして10年以上のキャリアを積んだStrasser氏は、「Art of Fauna」で2度目となるApple Design Awards(今回はインクルージョン部門)を受賞しました。この作品は、ビンテージ風の動物イラストと、その習性や生息地に関する生き生きとした説明が特徴のパズルゲームです。「誰もが楽しめ体験を目指して設計されている」とStrasser氏は説明します。
Art of Fauna
- 対応デバイス: iPhone、iPad
- チームの規模: 1人
- 拠点: オーストリア
- 受賞歴: App Store Awards受賞(2025年)、Apple Design Awardsインクルージョン部門受賞(2025年)、Apple Design Awardsソーシャルインパクト部門ファイナリスト(2025年)
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「Art of Fauna」は、一般的なパズルゲームとは少し趣が異なり、遊び心にあふれながらも、科学と歴史に対する深い敬意が感じられます。制作のきっかけはどのようなことですか?
Strasser氏: ソーシャルメディアをスクロールしていた時に、美しいビンテージの動物イラストを見かけたのがきっかけでした。それらはロイヤリティフリーで、Biodiversity Heritage Libraryから入手できることを知りました。当時はコージーゲームにはまっていて、そのスタイルで何かを作りたいと考えていました。これらの画像とコージーゲームを組み合わせたら面白いかもしれないと思ったのです。
パズルの仕組みのプロトタイプは、かなり早く完成していました。しかし、私は常にアクセシブルなゲームを目指しており、特に目の不自由な人も楽しめるようにしたいと考えています。動物に関する説明を誰もが理解できるようにするには、どのような方法が有効かとあれこれ模索しました。その結果、実はしばらく「Art of Fauna」の開発を中断していたのです。

開発を再開するきっかけは何だったのですか?
Strasser氏: ある日、婚約者と一緒に自然を散策していると、そこに生息する生き物についての案内板が目に留まりました。公園や自然保護区でよく見かけるような案内板です。動物の美しいイラストが描かれ、短い説明が添えられていました。それを見た時、「Art of Fauna」でも同じように、片側に画像を表示し、もう片方にはテキストを表示するというアイデアが浮かびました。そこからは、パズルのピースがはまるようにすべてがうまくいきました。

アクセシビリティがデベロッパとしての優先事項となった経緯をお聞かせください。
Strasser氏: 2015年のWWDCで、アプリの一つがアクセシブルでない理由について質問されました。しかし、私は答えることができませんでした。それまで考えたこともなかったのです。
その後、ドイツの視覚障がいのあるデベロッパに連絡し、アクセシビリティへの理解を深めるために協力をお願いしました。とても素晴らしい挑戦でしたが、「Elementary Minute」をアクセシブルにした後、ユーザーから素晴らしい反応がありました。それ以来、アクセシビリティに全力で取り組んできました。視覚に障がいのあるユーザーと多くの話し合いを重ねる中で、アクセシブルにできないほど複雑なゲームは存在しないことに気付きました。慎重にデザインし、仕組みに注意深くアプローチするだけです。このことは私の信条になりました。アクセシブルな体験の構築のみを追求したいのです。
他のデベロッパが同じ目標に向かって取り組む方法について、何かアドバイスはありますか?
Strasser氏: WWDCにはアクセシビリティに関する素晴らしいセッションがたくさんあります。目の不自由な方のデバイス操作を体験する優れた方法の一つは、iOSのスクリーンカーテンを利用することです。この機能を有効にすると、iPhoneの画面をオフにしたまま、VoiceOverを使って操作することができます。目が見えると、視覚に障がいのある方がデバイスをどのように操作しているかを想像できません。画面が一切見えない状態で自分のアプリを操作してみると、プロジェクトに対する視点が大きく変わることがあります。

最初の頃は、主に一人でアプリを開発していらっしゃいましたね。しかし「PocketShelf」は、デベロッパのFrank Solleveld氏と共同開発されました。その経験から何を学びましたか?
Strasser氏: コードの書き方が変わりました。一人で作業している時は、たまにメモを取るくらいで、ほとんどのアイデアは自分の頭の中にあります。「PocketShelf」では、コンセプトを書き留めて、同じビジョンを持つパートナーと話し合うことの価値を学びました。これはまったく異なるクリエイティブなプロセスです。協力者がいたおかげで、アプリを大幅に早くリリースでき、私一人で作るよりもはるかに堅牢なプロジェクトになりました。
「PocketShelf」は、あなたにとって初めてオンデバイスAIを活用したアプリでもありますね。このアプリの開発中、オンデバイスAIの活用に向けてどのようにアプローチしましたか?
Strasser氏: 「PocketShelf」の場合、ユーザーは当初から、読んだ内容の要約をAIが生成することを求めていました。情報がユーザーの記憶にしっかりと残るように、ユーザーのメモのみに基づいて要約が作成されるよう明確に決めました。自分の言葉で書き留めた方が、物事を最もよく記憶できることが研究でわかっているからです。私たちは、人間の認知プロセスを奪いたくありませんでした。そのため、AIの要約は新しいものを生成しません。自分自身の言葉を、役立つパーソナルな要約にまとめます。

それは非常に思慮深いアプローチですね。また、「Art of Fauna」の販売収益の20%を野生生物保護団体に寄付するというご決断も素晴らしい取り組みです。
Strasser氏: 有意義な形で科学と自然保護に恩返しできると思いました。あの美しいイラストについては、原画の作者が亡くなってから長い時間が経過しているため、無料で利用することができました。「過去のアート」を使って「現代のアプリ」を構築し、「未来の保護」に貢献するというアイデアが、自分でもとても気に入っています。
この作品がこれほど大きな影響を与えるとは、想像もしませんでした。当初、「Art of Fauna」の収益は数千ユーロ程度だろうと思っていたのです。ところが、先日、寄付した団体から証明書が届き、その寄付金で3,700平方メートルもの熱帯雨林が保護されたことを知りました。このアプリが現実世界に影響を与えているのは、本当に驚くべきことです。
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デベロッパストーリーでは、Appleコミュニティでひと際独創的なデベロッパを取り上げ、そのベストプラクティスや哲学に迫ります。それぞれのストーリーで、デベロッパやデザイナー、エンジニアたちによる制作の舞台裏を覗き、素晴らしい作品を生み出したアプリやゲームの背景を探ってみましょう。