ADA Q&A:「サイバーパンク2077」の世界の舞台裏
2026年5月16日

Macでプレイできるゲームの中でもトップクラスの高度なテクノロジーと野心的なビジュアルを追求した作品が、「サイバーパンク2077」です。息をのむほど精緻に描かれたディストピアの世界には、建造物の複雑なディテールや個性的で未来的な車両のデザインが満載で、ハードボイルドな姿のキャラクターたちが活躍します。プレイヤーは、華やかで荒々しいこの世界が、本当に実在するかのように感じるでしょう。テクノロジー面で他を圧倒する本作では、Appleシリコン、Metalシェーダ、MetalFX Frame InterpolationとDenoising、そしてハイエンドチップによるパストレーシングなどの機能をフル活用しています。また、「For This Mac(このMac用)」プリセットを使用することで、各デバイスに最適な設定になるように、フレームレートとビジュアル品質が自動的に調整されます。
アソシエイトゲームディレクターのPaweł Sasko氏に、本作のナイトシティの世界をMacにポーティングする取り組みについて伺いました。
サイバーパンク2077:アルティメットエディション
- チーム名: CD PROJEKT RED
- 対応デバイス: Mac
- 拠点: ポーランド
- カテゴリ: ビジュアルとグラフィック
「サイバーパンク2077:アルティメットエディション」をApp Storeからダウンロード >
このような技術的に複雑なゲームにおいて、デザイン上で最も苦心した決断はどのようなものでしたか?
Sasko氏: パフォーマンスを拡張しつつ、ゲームのビジュアル面の個性を維持するのは、決して簡単なことではありませんでした。本作の核をなしているのは、ナイトシティを創り出している高密度なライティングスタック、反射マテリアル、ボリュメトリクス、レイトレーシング、多層的なビジュアルシステムです。難しいシーンでは、クオリティ面で妥協してしまえば楽だったでしょう。でもそうすると、この世界の雰囲気や、プレイヤーの感情に訴える効果は損なわれてしまいます。そのため、プロファイリング、設定一つひとつの調整、再利用可能なシーンの検証、システムの最適化などに膨大な時間を費やし、忠実度と安定性の両方を維持できるようにしました。
デザイン面で最も議論になったテーマの1つは、「サイバーパンク」シリーズの本作の真のアイデンティティは何かということでした。ゲーム開始直後、「Cyberpunk 2077」でプレイヤーが目指すのはナイトシティで伝説的なアウトローになるというストーリーに思えます。いかした車、名声、富というような派手な世界です。しかし、真の物語は陰影に満ちた、よりパーソナルなものです。末期の病気とそれにどう向き合うかを描く物語なのです。これらのストーリー要素と、プレイヤーの自由度、映画のような一人称視点による力強いストーリーテリングを持つオープンワールド、そして人間の実存を問うテーマのバランスを見つけるには、何度も議論を重ねる必要がありました。ゲームを楽しんでもらうだけでなく、プレイを終えた後も深く心に残る体験を生み出したかったのです。

最終製品に目に見える形で反映されていないけれども、あなたが最も誇りに思っていることは何ですか?
Sasko氏: ゲーム開発には、明文化されていないルールがあります。すべてが完璧に機能していれば、どれだけの労力が費やされたかは誰も意識しないでしょう。しかし、フレームペーシング、ストリーミング、コントロール、ライティング、アニメーション、UIフローなど、たった1つのコンポーネントでもおかしな動作をした瞬間に、プレイヤーには拭い難い違和感が生じます。
そのような意識されない洗練こそ、私が最も誇りに思うものです。舞台裏では、何年にもわたるプロファイリング、最適化、シェーダの検証、テストループ、アーキテクチャの見直し、そして多数のハードウェア構成を対象とする継続的なイテレーションを行っています。アプリの切り替え、フルスクリーンでの挙動、HDRのキャリブレーション、コントローラの反応、ディスプレイ間の移動といった細かな点にも、Mac版の「サイバーパンク」を完全にネイティブなゲームと感じてもらいたいという思いから、私たちは妥協しませんでした。プレイヤーがゲームを起動して、技術的なことを気にせずナイトシティの世界にどっぷり浸かることができたなら、私たちの努力は報われます。
制作プロセスでは、どのようなAppleのツールやテクノロジーが中心的な役割を果たしましたか?
Sasko氏: Game Porting Toolkitのおかげで、ネイティブコードを書き始める前の時点ですでに、ポーティング後の環境でゲームを評価することができました。そのため、フレーム時間がどこで消費されているか、負荷がCPUとGPUのどちらに集中しているか、ネイティブに移行した際に重点的な対応が必要なシステムはどれか、といった情報を早い段階で把握することができました。
それ以降は、Metal APIとMetalシェーダコンバータがレンダリングプロセスの要となりました。動的解像度スケーリングに対応したMetalFXも、最も負荷の高いゲームプレイシナリオにおいて、画質を保ちつつ安定したパフォーマンスを維持する上で役立ったため、私たちの戦略の重要な要素となりました。さらに、AppleのEDRパイプラインを通じたHDRや、AirPodsでのヘッドトラッキングに対応した空間オーディオ、ゲームモード、ネイティブコントローラのサポート、iCloudでのデータセーブなどのプラットフォーム機能も統合することで、macOS上での快適なゲーム体験を実現しました。

このような大規模なプロジェクトの経験者として、ゲーム開発を始めたばかりのデベロッパやデザイナーにアドバイスをお願いします.
Sasko氏: 私は、極めて複雑な世界を創り出せるビデオゲームは、エンターテインメントや芸術表現の中で最も重要な分野の1つになりつつあると確信しています。ゲームはストーリーテリング、テクノロジー、音楽、アート、システムデザイン、映像表現、心理学、そしてプレイヤーの主観的体験のすべてを包摂します。ゲームは他に類を見ないメディアであり、今後ますます評価が高まっていくと思います。
私からの一番のアドバイスは、常に制作の手を休めない、ということです。「サイバーパンク2077」のような大規模な制作プロジェクトも、実際には何千もの小さな問題を、長い年月をかけて一つひとつ解決していくプロセスです。独りよがりのこだわりを捨てて、改善のための試みを繰り返すこと。たとえそれが、信じられないほど困難でも。テストし、やり直し、再設計し、改善する。それを繰り返す。成長が早いのは、常に好奇心にあふれ、順応性と協調性に富み、情熱を持ち続けているデベロッパです。そして、率直に伝えたいのですが、自分がチームとともに構築した世界がプレイヤーに感動をもたらしたことを実感するのは、この上ない喜びの瞬間ですよ。
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