Q&A:visionOSの空間デザイン

空間コンピューティングでは、アプリやゲームのデザインにおいて新しい可能性が広がるとともに、独自の課題も発生します。WWDC23では、デベロッパがvisionOS向けのデザインを詳しく学べるよう、AppleのデザインチームによってさまざまなQ&Aセッションが開催されました。ここでは、イマーシブ体験のさまざまなレベル、鍵となるタイミング、サウンドデザインに関するインサイトなど、セッション中の会話から要点をいくつか紹介します。

このプラットフォームでの第一印象を優れたものするにはどうすればよいですか?

これは当然アプリによっても異なりますが、まずウインドウから始めるのが適しています。ユーザーにアプリを紹介し、イマーシブ体験のレベル管理をユーザーに委ねることができるためです。一般に、ユーザーを即座にフルイマーシブ体験に案内することはおすすめしません。まずユーザーにアプリの基本的なことを理解してもらってから、別の環境に案内するのがよいでしょう。

既存のiPadOSアプリやiOSアプリをvisionOSに移行する際は、何を考慮すべきですか?

アプリが空間で効果を発揮するとき、つまり鍵となるタイミングについて検討します。たとえば、visionOSの写真アプリでパノラマ写真を開くと、視野を取り囲むように画像が表示されます。アプリにとって鍵となるタイミングとして、画面に縛られない体験にどのようなものがあるか、考えましょう。

より戦略的な観点では、visionOSに合わせてUIをどのように最適化する必要があるかを検討します。詳細については、「空間ユーザーインターフェイスのためのデザイン」をご確認ください。

空間ユーザーインターフェイスのためのデザイン

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「鍵となるタイミング」とはどういうことか、もう少し詳しく教えてもらえますか?

鍵となるタイミングとは、visionOSの独自の機能性を活用する機能やインタラクションのことです(アプリを空間またはイマーシブな観点で考えたときにハイライトとなる体験だと考えてください)。たとえば文章作成アプリを開発している場合、鍵となるタイミングとして、ユーザーがフォーカスモードで集中したり、空間オーディオのサウンドスケープでクリエイティブフローに専念できるようにする、といった場面が考えられます。これは画面で作業するデバイスではできないことです。

iOSやmacOS向けのデザインではグリッドシステムをよく使いますが、visionOSでも使えるでしょうか?

もちろんです。グリッドはウインドウのデザインに非常に便利で、ポイントサイズはプラットフォーム間で直接置き換わり調整されます。たとえば、遠方にある要素のコントロールを近くに配置するなど、3Dで要素をデザインする場合は条件がより複雑になります。詳細については、「空間デザインの原則」をご確認ください。

空間デザインの原則

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デバイスを使用せずにApple Vision Proの体験をテストするにはどうすればよいですか?

XcodeのvisionOSシミュレータを使って、ピンチ、ドラッグ、タップ、ズームなど、システムジェスチャを再現できます。

空間コンピューティングのデザインを洗練されたものにする最も簡単な方法は何ですか?

取り掛かりとして、システム提供のUIコンポーネントを使うことをおすすめします。ホバーエフェクトについては、それぞれの要素がデフォルトではどのように表示され、ユーザーが要素に視線を向けるとどのように変化するかを考えてみましょう。カスタムコンポーネントや3Dオブジェクトのような大きな要素を構築する場合は、ホバーエフェクトもカスタマイズする必要があります。

visionOS向けのデザインでは、人間工学に基づいたデザインやインタラクションに関してどのような点に留意する必要がありますか?

快適性が体験の指針となるはずです。ユーザーが首や体をあまり動かさずに済むように、主要なコンテンツは視野内に配置することをおすすめします。コンテンツが視野の中央近くにあるほど、目に対する負担が軽減されます。また、入力の方法を考えることも重要です。アプリをシステムのジェスチャに対応させて、ユーザーが視線で要素に焦点を合わせ、ピンチなどの手のジェスチャで選択するなど、間接的な方法でコンテンツを操作するオプションを用意しましょう。デザイン上の考慮事項の詳細については、「視覚とモーションに関するデザイン上の考慮事項」をご確認ください。

視覚と動きのデザインに関する考慮事項

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フルイマーシブ体験を実現するためのデザイン原則はありますか?コンテンツは、ユーザーの頭部の後方、上方、下方を取り囲む必要があるでしょうか?

コンテンツは任意の場所に配置できますが、イマーシブ体験は必要とされる範囲でのみ提供することをおすすめします。アプリでは、ユーザーの周囲全体を取り込むことなくイマーシブな体験を作り出すことができます。詳細については、ヒューマンインターフェイスガイドラインをご参照ください。

Human Interface Guidelines: Immersive experiences

フルイマーシブ体験を実現する環境を作るためのガイドラインはありますか?

環境にはまず、現実世界と同じ高さの地面を足下に表示する必要があります。環境の詳細をデザインする際は、イマーシブ体験を作り出すために鍵となる細部に注目します。たとえば、実際の映画館にいるような感覚を伝えるのに、あらゆる細部をレンダリングする必要はありません。山岳地の環境では、穏やかに流れる雲など、わずかな動きを使って環境を生き生きと表現することもできます。

空間コンピューティングのデザインでは、ほかにどのような点を考慮する必要がありますか?

思い付くのはサウンドデザインです。ほかのAppleプラットフォームを想定したデザインでは、それぞれのインターフェイス用にオーディオを作成することにそれほど重点を置いていなかったかもしれません。ユーザーがデバイスを消音にすることは多いですし、単に既存の体験では要望がなかったということもあるでしょう。Apple Vision Proで魅力的な体験を作り出すためには、サウンドデザインは欠かせません。

人は音を通して周囲の状況をうまく理解します。visionOSのアプリやゲームで音を使うと、ユーザーが周囲の要素をよりよく理解し、操作できるようになります。たとえば、ボタンを押したときに聴覚的な知らせがあると、操作を認識したり確認したりするのに役立ちます。visionOSで音を空間に配置して、ユーザーが操作する対象から直接音が聞こえるようにしたり、周囲の状況を利用して適切な反響や質感を再現したりすることができます。シーンの空間サウンドスケープを作成して現実感を高め、よりイマーシブな体験を作り出すこともできます。visionOS向けのサウンドデザインの詳細については、「イマーシブなサウンドデザインについて」をご確認ください。

イマーシブなサウンドデザインの詳細

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さらに詳しく

visionOS向けのデザインに関するその他の情報は、ビデオ、ヒューマンインターフェイスガイドライン、およびApple Developer Webサイトをご確認ください。

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Design for visionOS