「早期に、責任を持って導入」:100を超えるアプリに新デザインを導入したZohoの取り組み
2026年10月5日

Appleが新デザインとLiquid Glassを発表した時、Zohoは迅速に行動しました。そうする必要があったのです。
App Storeで100以上のアプリを配信している同社にとって、導入が決して容易でないことは明らかでした。しかしその数か月後、努力が十分に価値のある結果をもたらしたことを実感します。「自社のエコシステムの規模を考慮して、計画的かつ段階的なアプローチを採用しました」と、Zohoでプロダクトマネジメントディレクターを務めるAshok Ramamoorthy氏は説明します。
同社がどのように移行に取り組み、その過程で何に気付いたのか、また、この経験から他のデベロッパが得られる教訓について、Ramamoorthy氏にお話を伺いました。
新デザインとLiquid Glassを採用するというチームの決断に至った背景をお聞かせください。
Ramamoorthy氏: Appleがこの新しいデザイン言語を発表した時、私たちにとって、これはチャンスであると同時に責任でもあると考えました。そこで、2つのアプローチで臨むことにしました。
SwiftUIファーストのアプリはシームレスに適応します。多くのアプリはLiquid Glassと自然に調和し、新しいデザイン言語との視覚的な統合やコンパイルを最小限の手間で実施できました。
UIKitベースのアプリについては、2段階の戦略を採用しました。最初の段階では、互換性と安定性に重点を置き、アプリが、既存のワークフローを乱すことなく、新しいデザインシステムでシームレスに機能することを確認しました。第2段階は現在も継続中です。デザインを中心とする取り組みであり、Liquid Glassの原則を採用することでコアな体験を段階的に見直しています。その過程で、Liquid Glassが実現する奥行き、レイヤー、滑らかさを最大限に活かすため、ナビゲーションパターンとインタラクションモデルを刷新しています。
Liquid Glassを単なる見た目のアップデートとして捉えるのではなく、ユーザーがアプリを操作する方法を見直す機会と考え、イノベーションと安定性を両立できるよう段階的に導入します。

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貴社には膨大な数のアプリがあります。新デザインの導入プロセスについてお聞かせください。
Ramamoorthy氏: Appleがこのような規模で新デザインの方向性を発表したのであれば、デベロッパはそれを早期に受け入れるべきだと考えています。この意思決定は迅速で、揺るぎないものでした。
とはいえ、採用には慎重な計画が必要でした。リソースの可用性、コードベースの複雑さ、各アプリの性質、ビジネス上の重要性に基づいて、導入の優先順位を決定しました。これによりスピードと安定性を両立できました。
当初はいくつかの懸念がありました。UIKitベースのアプリはどの程度効果的に適応できるのか、OSバージョン間での下位互換性をどのように確保するのか、すべてのアプリを全面的に刷新する必要があるのか、あるいは段階的な導入で十分なのか、という点です。これらの検討事項は、私たちの意思決定を遅らせることはなく、より慎重な展開戦略を策定するのに役立ちました。
私たちの最終的な方針は、「早期に、責任を持って導入する」というシンプルなものでした。
まず、何を行いましたか?
Ramamoorthy氏: Xcodeベータ版を使用してアプリをコンパイルし、新しいデザインシステム内でどのようにレンダリングされるかを観察しました。既存のインターフェイスの動作がすぐに明らかになり、最初に手掛けるべき部分の特定に役立ちました。
同時に、いくつかのアプリでは、より野心的なアプローチを取りました。例えば、「Bigin by Zoho CRM」では、段階的な変更ではなく、Liquid Glassの原則を全面的に採用し、初日からリリースすることを目指しました。困難でしたが、早い段階で限界を超え、残りのアプリのベンチマークを設定するのに役立ちました。

ZohoのCRMアプリである「Bigin」は、スモールビジネス向けに設計されています。
新デザインが公開されてから約1年が経ちました。最も重要な学びや成果は何でしょうか?
Ramamoorthy氏: 最大の気づきは、デザインによってユーザビリティ、特にビジネスユーザーにとっての使いやすさが大きく向上するという点です。当社のアプリは、一般的なコンシューマー向けアプリよりもタスク重視であり、効率性が求められる長時間のセッションで多く使用されます。Liquid Glassを導入することで、ナビゲーションがシンプルになり、レイヤー化された情報の視認性が高まりました。同時に、操作もより軽快で直感的になりました。
正直なところ、リリース初日はとても不安でした。ビジネスアプリの場合、大幅なデザイン変更は、既存の操作習慣を乱すリスクがあります。しかし、反応は安心できるものでした。ユーザーはすぐに適応し、多くの場合、改善点を高く評価してくれました。特に、ナビゲーションパターンとタブ構造が好評でした。
重要な学びは、Liquid Glassは単なる見た目のアップデートではなく、構造やフローを見直す機会を与えてくれるという点です。Liquid Glassを見た目だけのアップデートとして扱うのではなく、その原則に取り組んだチームが最も大きな成果を上げました。
デベロッパコミュニティでも同様の傾向が見られました。新しいデザインシステム全体を受け入れ、インタラクションや階層を見直したアプリは、見た目の変更のみを施したアプリよりも際立っていました。新しいデザイン言語の導入においては、実装と同じように、考え方が重要になります。

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導入以降、どのようなメリットがありましたか?
Ramamoorthy氏: 最も顕著な改善点は、ナビゲーションが整理され、複雑なワークフローが簡素化されたことと、重要な情報がより明確に表示されるようになったことです。特に、スピードと明確さを重視するビジネスユーザーにとって大きなメリットとなりました。
評価指標の観点から見ると、特にUIスタックの一部を刷新したことでアプリのパフォーマンスが向上し、セッション時間が長くなりました。また、レイアウトや階層の工夫によって主要機能がより見つけやすくなり、利用率が向上しました。
最大のメリットは、シンプルさと有効性の両方を実現できたことです。ユーザーは、少ない労力でより多くのことをできるようになりました。
ユーザーの反応はどうでしたか?
Ramamoorthy氏: 非常に励みになっています。当社のアプリは、主にビジネスユーザーに利用されています。ワークフローやナビゲーションの変更に敏感なユーザー層であるため、慎重に対応したのですが、実際に得られたフィードバックを見てほっとしました。
多くのユーザーが、シンプルでわかりやすい点を高く評価してくれました。「このアプリの、シンプルなUIとUXで多くの機能を使えるところが気に入っています」という声が寄せられました。別のユーザーからは「シンプルで使いやすいCRMで、必要以上に複雑でなく基本的な機能をしっかり備えている」と評価されています。

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最も驚いたことは何でしょうか?
Ramamoorthy氏: Liquid Glassの導入により、各プラットフォームへの展開が遅くなるどころか、むしろ加速したことです。
外出先での業務管理に役立つツールとして、かねてより多くのユーザーからApple Watch向け「Bigin by Zoho CRM」アプリを求める声が寄せられていました。私たちはすでにその計画を立て、ワイヤーフレームの初期案も作成していました。そのような時にLiquid Glassの発表があったのです。OSリリースの初日に合わせるということは、UIの一部を完全に見直すことを意味します。当然、Watchアプリの開発スケジュールは遅れるだろうと予想されていました。
ところが、結果は逆でした。Liquid Glassは、より構造化およびレイヤー化された、一貫性のあるデザインシステムを採用しており、そのデザイン思想をプラットフォーム間で自然に移植することができます。iOSアプリの基盤があったため、watchOSへの拡張作業が大幅にスピードアップされました。数週間かかると予想していた作業をわずか数日で完了できたのです。
私たちは、iOS、iPadOS、macOSのアップデートと同時にApple Watchアプリをリリースし、エコシステム全体で初日から一貫した体験を実現しました。

Apple Watch版の「Bigin」を予想より早期にリリース。「iOSアプリの基盤があったため、watchOSへの拡張作業が大幅にスピードアップされました」(ZohoのプロダクトマネジメントディレクターAshok Ramamoorthy氏)
どのような課題に直面しましたか?また、どのように克服しましたか?
Ramamoorthy氏: 最大の課題は、深いレベルでのコードベース変更を適切に進めることでした。私たちは、すでに成熟し、豊富な機能を備えたアプリを多数抱えています。新しいデザイン言語を導入するには、これらのアプリの安定性を損なうことなく、コアのUIレイヤーを修正しなければなりません。UIKitベースのアプリで同等の体験を実現することも課題でした。SwiftUIアプリは新デザインに自然に適応しましたが、UIKitアプリ全体で統一されたLiquid Glass体験を確保するには、いっそうの労力や慎重な抽象化が求められ、そして時にはUIコンポーネントへのアプローチを根本的に見直す必要がありました。さらに、従来のOSバージョンのサポートも大きな問題でした。新デザインの機能を取り入れつつ、まだアップグレードしていないユーザーに安定した体験を提供しなければなりません。
これらの課題を乗り越えるためには、社内でのイテレーション、ユーザーからの要望、Appleからのフィードバックやワークショップで得たアドバイスに基づく継続的な学習が不可欠でした。
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デベロッパストーリーでは、Appleコミュニティでひと際独創的なデベロッパを取り上げ、そのベストプラクティスや哲学に迫ります。それぞれのストーリーで、デベロッパやデザイナー、エンジニアたちによる制作の舞台裏を覗き、素晴らしい作品を生み出したアプリやゲームの背景を探ってみましょう。