日本製文房具への愛から生まれたNoteshelf
2026年7月21日

Rama Krishna氏のApp Storeへの道のりは、東京の文房具店から始まりました。
2000年にインドから日本へ移住したKrishna氏は、日本の文房具の機能美とデザイン性に惹かれていきました。インクや紙だけでなく、そうしたものを大切に扱う文化に魅了されたのです。「紙の品質から、シンプルな筆記具のデザインにいたるまで、それまで見たことのないものばかりでした」とKrishna氏は振り返ります。
当時、Krishna氏は、昼間はソフトウェアシステムの構築にあたり、夜は筆記具の世界に没頭する日々を送っていました。その後、Appleが初代iPadを発表した時、物理的なノートと同じ満足感が得られるデバイスを初めて目の当たりにしたのです。その体験をもとにKrishna氏が開発したメモアプリ「Noteshelf」は、最初期のiPad向けタイトルの一つとしてApp Storeで配信されました。
Fluid Touchの創設者であるKrishna氏に、当時のインスピレーション、このアプリの進化、そして今後の開発プランについてお話を伺いました。
Noteshelf
- 対応デバイス: iPhone、iPad、Mac、Apple Watch
- チームの規模: 35人
- 拠点: ハイデラバード(インド)
「Noteshelf」をApp Storeからダウンロード >
日本の文房具への情熱を抱き始めたのはいつ頃でしょうか?
Krishna氏: ソフトウェアエンジニアとして働くために日本に移住し、約12年間暮らしました。日本で生活する中で、日常的なモノに見られる配慮や細部へのこだわりに強く惹かれるようになりました。
子どもの頃から絵を描くのが好きで、いろいろな文房具を使いましたが、日本の文房具はまったく次元が違いました。
よく渋谷や銀座の店舗を探索したことを覚えています。ある日、新宿で「世界堂」を見つけたのですが、そこは文房具ファンにとってまさに天国のような場所でした。仕事帰りに立ち寄っては、ノートや画材を眺めていました。そこには常に新しい発見があったのです。その時、これは単なる興味以上のものだと確信しました。

その当時、インスピレーションを受けたアイテムについて、いくつか具体例をお聞かせいただけますか?
Krishna氏: 日本の文房具に触れるきっかけとなったアイテムの一つは、伝統的な毛筆を再現した筆ペンでした。コンビニエンスストアなど、どこでも手に入るアイテムです。この筆ペンを使って、何時間も書道の練習をしました。
さまざまな店舗を巡るうちに、美しくデザインされた文房具の世界を発見しました。中でも、トンボ鉛筆のデュアルブラッシュペンの大ファンになり、全色をコレクションしたほどです。そのほか、スケッチに最適なサクラクレパスのミクロンペン、コミックアート用のコピックマーカー、筆記用のパイロットジュースペンなど、買い集めたアイテムは今でもすべて所有しています。
特に印象的だったのは、これらの製品に込められた哲学です。ミニマルでありながら、驚くほど精巧に作られています。どのアイテムも、筆記、スケッチ、プランニングがより楽しくなるようにデザインされていると感じました。
Noteshelfは、App Storeで最初に配信されたiPadアプリの一つです。これほど早い時期に参入することが重要だったのはなぜですか?
Krishna氏: iPadを見た瞬間、直感的にピンとくるものがありました。大きな画面とタブレット型の形状は、何かを考えたり、書いたり、計画したりするのにぴったりだと感じました。これなら、紙のノートならではの体験をテクノロジーで再現できると初めて思えたのです。
私の文房具への情熱と、テクノロジー分野でのキャリアが結びついた瞬間でした。その時、私の頭に浮かんだのは、「最新テクノロジーの柔軟性やパワーを活かしつつ、高品質な文房具のエッセンスをアプリに取り入れるにはどうすればよいのか」という問いでした。この疑問が「Noteshelf」の土台となりました。早期の参入は戦略的に計画したことではありません。このアイデアを形にしたいというワクワク感から生まれたのです。

一時期、NoteshelfはiPad向けApp Storeでランキング1位になりました。どのようなお気持ちでしたか?
Krishna氏: 現実とは思えませんでした。わずか4人の小さなパートタイムチームだったのに、「Noteshelf」が「Angry Birds」より上位にランキングされていたのですから。
Noteshelfでは、機械学習やAIをどのように統合していますか?
Krishna氏: 私たちのルーツは高品質な文房具にあるので、生成AIをアプリの主軸に据えないよう配慮しました。私たちのアプローチは、デジタルノートの本来の価値を維持しつつ、メモの作成を純粋にサポートする形でAIを活用することです。
例えば、Foundation Modelフレームワークを利用して、ノートのタイトルを提案したり、メモの整理や検索性の向上に役立つタグを自動的に生成したりしています。作文ツールや画像生成などのApple Intelligence機能も取り入れています。さらに、AIを活用した音声文字起こし機能も搭載し、講義やミーティングの内容をノート内でリアルタイムにテキスト化できるようにしています。
今年後半には、音声録音をもとにAIが要約やアクションアイテムを生成する機能を導入する予定です。また、ユーザーがすべてのノートから情報を簡単に探し出せるようにするため、自然言語検索にも取り組んでいます。
新デザインとLiquid Glassの導入については、どのようなアプローチを取っていますか?
Krishna氏: 私たちは初期のベータ版からLiquid Glassへの対応を進めており、iOS 26正式リリースから数日以内に、ツールバー、タブバー、ボタン、インターフェイスなどの主要エリアに新デザインを採用した「Noteshelf」のアップデートをリリースしました。私たちの目標は、このデザイン言語の精神を取り入れることです。つまり、軽やかさと滑らかさを感じさせつつ、作業に集中できる落ち着いたライティングキャンバスを目指しています。
また、Liquid Glassからインスピレーションを得た特徴的な体験も2つ用意しました。一つはツールバーのカスタマイズ機能で、なめらかで遊び心あふれる方法でツールを選ぶことができます。もう一つはCovers Galaxyです。イマーシブな方法でノートの表紙をブラウズして、お気に入りのカバーを見つけることができます。

ご自身とNoteshelfの次のステップをお聞かせください。
Krishna氏: 私たちが注力しているのは、実際の文房具のこだわりを維持しつつ、最新テクノロジーによってそれを強化した「デジタル文房具体験」を創り出すことです。
例えば、現在開発中のアドオン機能を使えば、思わず集めたくなる付箋、ステッカー、和紙テープなどをダウンロードできるようになります。過度にリアルなデザイン(スキューモーフィックデザイン)を避けつつ、実際の文房具店を見て回っているかのような体験を提供する方法をいろいろ試しています。すでにいくつかの初期プロトタイプがあり、とてもワクワクしています。
私たちは、これまでに作られたデバイスの中で、「考える、書く、創り出す」を最も自然に行えるデバイスの一つがiPadだと確信しています。今後の目標は、この体験をさらに推し進めていくことです。
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デベロッパストーリーでは、Appleコミュニティでひと際独創的なデベロッパを取り上げ、そのベストプラクティスや哲学に迫ります。それぞれのストーリーで、デベロッパやデザイナー、エンジニアたちによる制作の舞台裏を覗き、素晴らしい作品を生み出したアプリやゲームの背景を探ってみましょう。