Lykke Studios:理想のぷっくりステッカーを求めて
2026年4月24日

「puffies.」は、ジグソーパズルのピースをはめていく爽快感と、懐かしいステッカーブック作りが味わえる楽しいゲームです。
2025年のApple Design Awardsインクルージョン部門でファイナリストとなったこのゲームには、80年代の子どもたちがバインダーに貼ったり、休み時間に交換したりしていたような、ぷっくりしたバーチャルステッカーがいっぱいです。プレイヤーは、「パンクロッカー風カピバラ」や「スポーティーな寿司ロール」など、さまざまなテーマのカラフルでキッチュなパックを開封して、ステッカーどうしが重ならないように空白のシートを埋めていきます。
ステッカーの質感は驚くほどリアルで、光沢のある表面を指先で押した時のわずかな弾力まで感じられます。また、ステッカーを貼り付けるたびに「ポヨッ」という心地よい感触が指先に伝わり、この上ない満足感を与えてくれます。こうした感覚は、決して偶然に生まれたものではありません。「puffies.」のデベロッパであるLykke Studiosは、数か月にわたって調整を重ね、こうした細やかな操作感を作り上げました。
puffies.
- 対応デバイス:iPhone、iPad、Mac、Apple TV
- チームの規模:8人
- 拠点:タイ、キプロス
Apple Arcadeからpuffies.をダウンロードする >
「私たちは常に、自分が好きだと感じた素材から着想を得ています」と、Lykke Studiosの創設者Jakob Lykkegaard氏は語ります。2023年のApple Design Awards受賞作「stitch.」では、遊び心あふれる刺繍パズルに織り込まれた「糸」がその素材でした。また、2022年にApple Design Awardsファイナリストとなった「tint.」は、画用紙にペイントする「水彩絵の具」がテーマでした。
後の「puffies.」となるプロジェクトのブレインストーミングを始めた当初、チームが目指していたのは、タッチスクリーンで自然に操作できるジグソーパズルスタイルの体験でした。画期的だったのは、ぷっくりステッカーをパズルのピースとして採用したことでした。ぷっくりステッカーには独特の手触りと懐かしさがあり、普通のジグソーパズルのピースに比べると見た目の楽しさも格別です。
しかし、そう簡単にはいきませんでした。「ゲームの物理エンジンのせいで、最初のプロトタイプはほぼ爆発状態になってしまったのです」と、Lykkegaard氏は笑いながら振り返ります。

このゲームに登場する4,000種類のステッカーはいずれも3Dモデルオブジェクトであり、ゲームの物理エンジンに従って動くようになっています。しかし、初期のテストではうまく動作しませんでした。仮想のテーブル上でパーツが跳ね回らないようにする方法が形になると、チームは次に、プレイヤーがステッカーを別のステッカーの上に置こうとした時どうなるかという課題に取り組みました。そんなことがプレイ中に何度も起こるのかと言えば、そうとも限りません。それでもチームは、何か月もかけて完璧を追求したのでしょうか?答えは、言うまでもありません。
ステッカーどうしが重なった場合の処理についてもチームで議論したといいます。「その場にピタッと貼りつくのか?滑り落ちるのか?滑り落ちるなら、どの方向に、どのくらいの速さで動くのが自然か?」最終的に、ステッカーが置かれていたパズルの端まで素早く戻すことに決まりました。「これに3か月を費やしたと言っても過言ではありません」とLykkegaard氏は言います。「コードベース全体をご破算にして、納得がいくものになるまで一から作り直しました」
そうした完璧主義は、ゲームのデザイン全体に通底しています。ステッカーの輪郭部分は、自動トレースにすると無機質になりすぎるため、手作業で描かれました。デバイスを傾けると、ステッカーのビニール表面に繊細なパララックス効果が生まれ、まるで部屋の光を反射しているかのように見えます。さらにチームは、スナップ距離(ピースを離したとき、所定の位置にぴたっと収まる距離)についても、最後の1ピクセルに至るまで調整を繰り返しました。
「プレイヤーはそれを無意識に感じ取っているんです」と、Lykke Studiosのプロデューサー、Tanin-Andre Hohmann氏は話します。「なんとなく『こっちの方が好きだな』と感じてくれて、理由を聞いても、『よくわからないけれど、なんだかしっくりくる』と言うんです」

とことんまで追及するという哲学は、ゲームのアートにも及んでいます。キュートなサボテンのキャラクターから、擬人化されたラバーカップに至るまで、「puffies.」のステッカーは、世界中の才能あるイラストレーターたちによって命を吹き込まれています。「まさにアーティストのアートそのものです」とHohmann氏は言います。「できるだけ、描かれたままを表現したかったんです」
このゲームには母国の特性も活かされています。デンマーク生まれのLykkegaard氏をはじめ、チームメンバーの多くはヨーロッパ出身ですが、Lykke Studiosはタイのプーケットに拠点を置いています。そこは、堅苦しい会議室や大勢が集まるカンファレンスホールから遠く離れ、ゆったりとした生活とおおらかな創造性にあふれています。「ベイエリアやヨーロッパという独自の世界(バブル)に飛び込んでいろいろと探索し、またそこから抜け出す、というのが好きなんです。その後は、制限時間を設けることなく、考えたり新しいアイデアを思いついたりするのに没頭するんです」と、Lykkegaard氏は言います。
そんなゆったりとした考え方は、パズルそのものからも伝わってきます。ステッカーシート1枚1枚というレベルで、丹念な手作業による設計が行われています。アルゴリズムも自動化も、一切使いません。「puffies.」にはタイマーや「ゲームオーバー」画面はなく、難易度はプレイヤーが選んだパックに入っているステッカーの数だけで決まります。小さなデバイスで大きなパズルを解くときも、プレイヤーが圧倒されないようにカメラがゆっくりズームインして、これから配置しようとしているステッカーの行く先をフレームに収めてくれます。

アクセシビリティもまた、その妥協を許さないロジックで貫かれています。プレイヤーは、スナップ距離を広めにしたり、ステッカー配置のアウトラインを切り替えたりすることができます。また、運動機能が低下している場合や、手が非常に大きい場合に対応するためのフィンガーオフセットオプションも使用できます。基本方針はシンプルです。チームの想定外の障壁にプレイヤーが遭遇し、それが解決可能なものであるなら、チームは対応策を追加します。
こうした、こだわりのモノづくりにかかるコストは、何よりも「時間」です。幸いなことに、これまでの成功のおかげもあって、チームは厳しいマイルストーンに縛られることなく、ゲームを磨き上げることができています。ぷよぷよした感触やパチッとはまる感覚にこだわり、ステッカーパックが「ビリッ」と破れる感じを調整したり、ほんの少しのインタラクションが完璧でないという理由で大量のコードを捨てたりと、非常に細やかで徹底した仕事が「puffies.」の制作裏にはあるのです。
「このゲームには、誰も気づかないような部分がたくさんあります。それでも心血を注ぐのは、そのこだわりの存在を私たち自身が知っているからです。それこそが私たちの誇りです」と、Lykkegaard氏は語ってくれました。
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