デザインの裏: 「Shapr: 3D」

「Shapr: 3D」のキャンバスで設計した1ベッドルームアパート

インスピレーションに満ちた格言を書いた重みのないオフィスポスター(や皮肉っぽいパロディ版)は多数ありますが、上記のフレーズは、真の重みのある言葉となりました。この言葉に重みを与えたのは、設計ソフトを巡ってCsanádyの家族が味わった、もどかしい体験でした。「私の家族には、3世代にわたり8〜9人の建築家がいます」と、彼は言います。

子どもの頃、母親が「新しいCADソフトを導入するとなると、何か月もかかって大変」と愚痴をこぼしていたことを彼は覚えています。プログラムの仕組みを理解するために、高額な学校に通わなければならないことも多々あったといいます。「学校に行く代わりに、母はやがて、CAD製図担当者を2~3人雇うようになりました」。3Dモデリングマニアであり新進気鋭のソフトウェアエンジニアでもあるCsanádyは、すぐにこの問題に関心を持つようになりました。Csanádyは語ります。「優れた製品には、すぐに使いこなせるようになる、という特徴があります。ソフトウェアの使い方を(時間をかけて)学びたいと思っている人はいません」

簡略化されたAppのツール構造を表示する「Shapr: 3D」のキャンバス

Csanádyは短期間、iPhoneのデベロッパとして働いたあと、2010年、CADを製作する最初のスタートアップを設立しました。この最初の事業はうまくいきませんでしたが、Csanádyは考え続けました。長時間自転車をこぎ、夜遅くまで問題を熟考し、タッチベースのiPad用3Dモデリングシステムの最初のプロトタイプの作成に着手しました。

「私は取りつかれていました」と、彼は打ち明けてくれました。Csanádyは純粋な信念から、2014年、上級ソフトウェアエンジニアとしての仕事を辞め、開発に取りかかりました。その時点ではまだiPad ProとPencilは発売されていなかったものの、彼はタッチとスタイラスで操作するインターフェイスを検討し始めました。

「優れたインタラクションには常に、リアルなツールと物理的に似ている部分があります」とCsanádyは説明します。実際に手に持って使うツールからインスピレーションを得た彼は、モデリングを行うためのデジタルコントロールを、現実世界のツールを模して作ることにしました。iPad ProとApple Pencilが発売されると、Csanádyとチームは早速、その描画ツールを計画に盛り込みました。

「Apple Pencilとスタイラスのインタラクションが非常にパワフルなのは、どちらも現実世界を模したものだからです。我々の周りの物質世界を模したものであるため、入力デバイスの機能について(ユーザーを)教育する必要はありません。そのため習得時間を大幅に短縮できるのです」とCsanádyは語ります。

Csanádyと新たに拡大しつつあった彼のチームは、Multi-TouchとApple Pencilを使用し、「Shapr: 3D」の堅牢な基盤を構築しました。しかし、それを完成させるには長い年月が必要でした。「近道はありません。我々は何百ものプロトタイプを作成しました」

エンジンの3Dモデルを表示する「Shapr: 3D」のキャンバス

チームはプロの3Dモデラーや建築家にインタビューし、ケーススタディを行い、彼らに実際にソフトウェアを使って(時には壊して)もらいました。「数え切れないほどの失敗を見届ける必要があります」と彼は言います。「そうした失敗をもとに、細かいところに微調整を加えます。そうすることで、少しずつ適切な解決策へと近づいていくことができます」

プロ用Multi-Touchインターフェイスの設計においては、Csanádyとチームには学ぶべきことがたくさんありました。「明示的なものは常に、暗示的なものより優れています」と言う彼は、その例として「Shapr: 3D」のプッシュプル型インターフェイスを挙げました。このインターフェイスでは、アイテム上に矢印ハンドルが表示され、ユーザーが画面上でアイテムを「つかんで」動かすことができます。「数年前まで、この矢印はありませんでした。これは、過去最大の学びでした …このハンドルをわかりやすく示すことで、100倍うまく操作できるようになります」と彼は語ります。

「Shapr: 3D」は、発売から4年が経過した今も、プロ向けの完璧なツールを構築することにこだわり続けています。「『Shapr: 3D』のツールがうまく機能しているのは、きわめて特殊なユーザーが、きわめて特殊な状況下で使っているからです」と、Csanádyは言います。「この製品がユーザーの役に立っているのは、彼らを念頭に置いて設計してあるからです」

「Shapr: 3D」のキャンバス

「Shapr: 3D」チームは、窮屈なオフィスにいた初期の頃に比べて大幅に成長を遂げています。Csanádyはブダペストに55名のスタッフを擁し、全員が繰り返しの作業をこなし、Appを改善し続け、より優れたプロ用ツールにするために精力的に取り組んでいます。チームは、きめ細かく網羅したチュートリアル、コンテキスト制御とアダプティブ制御、キーボードショートカットを追加し、Appを使用するすべてのユーザーにとってプロセスがさらにスムーズになるよう、ワークフローを調整し続けています。Csanádyは次のように述べます。「常に目標を引き上げ、そして、いつも少しだけ不満を持つということが大切です。常に今より10%改善できます…自分が構築したものに決して満足してはならないのです」

フィールド調査に加え、チームは分析、使用状況データおよびApp Storeのレビューを長期的な製品計画に組み込みます。彼らは絶えず機会を評価し、会社が現在抱えているギャップを特定し、自分たちが目指す将来の位置付けを見据えています。これは多次元的で複雑なパズルですが、Csanádyのビジョンは明確で、少し野心的です。「ゼロックスのように、社名が動詞になる会社を目指しています」

Appを利用するデザイナーが1万人に達したことを祝う「Shapr: 3D」チーム。

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