デザインの裏: 「Darkroom」

写真撮影は誰もが楽しめるアートとなりました。iPhoneやiPadなどのモバイルデバイスを持っていれば、トレーニングや専門知識を必要とせずに、日常生活のちょっとした美しい瞬間を捉えることが可能です。例えば娘の5歳の誕生日、ムスクの香りを思い出させる8月の夜など、様々な瞬間をデジタル形式で保存できるのです。必要に応じて、作者独自の意図を明確にするために編集を行い、作品を待ちわびている人々と共有したり保存したりすることも可能です。

「Darkroom」の創設者兼CEOであるMajd Tabyは早くから、写真撮影、編集、そして共有の機能を備えたiPhoneの可能性に魅了されていました。彼は2010年代初頭Instagramに参画し、モバイル写真にのめり込むようになりました。数年後、彼は自身の芸術的探求のために様々な写真Appを使うことになりましたが、そのワークフローに不満を感じることが多かったと言います。

「私は(画像ごとに)同じことを何度も何度も繰り返していました。それぞれのAppはある1つの工程を処理するなら非常に優れていましたが、その1つしかできませんでした。4つのことをするために、4つのAppを使う必要があったのです」とTabyは言います。

2014年、ノルウェーでハイキングをしている時に、Tabyはモバイル写真撮影に最適な編集ツールを思い付きました。それは包括的な写真編集と写真管理のソリューションです。モバイル専用で、不必要なインポートやエクスポートがなく、複雑なワークフローもない、画像ライフサイクル全体に最適化されたものでした。「手間をかけずに、一貫した美しさで自分自身を一貫して表現できるものを作りたかったのです」と彼は言います。

カーブ編集インターフェイスの初期のスケッチ。

TabyはInstagramを退職して、自身のスタジオであるBergenを設立しました。すべてが始まったノルウェーの町の名を冠したこのスタジオで、彼はのちの「Darkroom」になるAppの開発に着手し始めました。当初Tabyは最終製品に沢山の機能を投入することを計画していましたが、その方針を撤回します。彼は、写真を撮影するすべての人が、そのレベルや習熟度にかかわらず、新鮮に感じられて使いやすいAppにすることを目標に決めたのです。「『写真の編集を、写真撮影と同じくらい簡単にするんだ』と何度も自分に言い聞かせていました」とTabyは振り返ります。

つまり、画像のワークフローの単純化を優先することです。写真ライブラリから強制的に画像をコピー、インポート、エクスポートすることなく、ライブラリにある写真を直接操作できるようにしました。写真をプレビューし、数回のタップで変更を保存したり取り消したりできます。チームは早い段階で、様々なモバイル用写真Appを試し、1つのアクションに必要なタップ数を計測して、「Darkroom」が同じタスクをシンプルにする方法を探りしました。

「スピードこそが、私たちが常に目指しているものです」とTabyは言います。「写真編集Appを使っていることをユーザーに忘れさせ、伝えようとしているストーリーに集中してもらいたいのです」

「優れたデザインとはわかりやすいデザインである、というのが我々の理念です。わかりやすいデザインであれば、すぐに使いこなせるようになります。わかりやすいということは、使いやすいということでもあります。つまり、問題に対して最も単純で最も簡単なアプローチから始めることであり、複雑化させることではありません。そのため、形式だけに着目するのではなく、機能を果たすための形式なのかを考えるよう心がけています。これは、形式と機能を逆にして考えた場合にも当てはまります」

Majd Taby, Darkroom founder

2015年に「Darkroom」が初めてリリースされてから今に至るまで、Appのデザインの中心にはワークフローを重視する姿勢が貫かれています。「デザインとは、機能上の制約から切り離されたものだと感じています」とTabyは言います。「私たちが目指すのは、すべてのユーザーがあらゆることを簡単にできるようにすることです。完全には実現できないでしょうが、我々が理念として掲げていることです」

「Darkroom」にはその理念が宿っています。Appを起動した時に、趣味のカメラマンが試してみたくなるようなインターフェイスを表示するよう心がけています。写真を邪魔することなくオプションを明確にするために、コントロールは常緑のシンボルと単純なハイライト色で表示されています。「私たちはまず、『このアイデアを実現するための最もわかりやすい方法は何だろうか」と考えるようにしています」とTabyは語ります。「わかりやすいデザインは冴えないという欠点がありますが、簡単かつ手早く操作できることを私たちは重視しています」

Tabyはノルウェーでの旅行中に「Darkroom」のアイデアを練りました。

Tabyはノルウェーでの旅行中に「Darkroom」のアイデアを練りました。

わかりやすいデザインが抱える課題の一つは、撮影者が一目で「Darkroom」の全機能を把握できないかもしれないということです。「すべてのユーザーが使えるよう、できる限り高度な機能を簡単にしています。それができない場合は、わかりやすいアクションの奥に高度な機能を置くようにしています」とTabyは言います。

チームは、オンボーディングとヒントのシステムを使って機能を見つけられるしくみを向上させました。また、様々なデバイスで各種のコントロールを表示する方法についても調査しました。例えばiPadだと画面が大きくなるため、「Darkroom」のインターフェイスを窮屈に感じさせずに、バッチ処理やRAW編集などの複雑なコントロールを表示できます。

画像を引き立てる「Darkroom」のインターフェイス。

チームはさらに「Darkroom」をiOSやiPadOSと深く統合し、キーボードとトラックパッドによる操作、Siriショートカット、「ファイル」Appとの統合、拡張機能など、ほぼすべてのシステム機能をサポートしました。これによって撮影者は、デバイスの使い方に合わせて編集のワークフローを最適化できるようになります。チームは引き続き、新機能を活用するための新しい方法を模索したり、撮影者がハードウェアとiCloudサービスを最大限に活用できるよう支援したりしています。

「私たちが最終的に目指しているのは、人々の生活をより良くする物を作り上げることです」とTabyは言います。「私たちはAppleのテクノロジーを採用し、Appleの世界に住むことを選択しました。これが、自社製品に託した理念を体現する一つの方法になると信じているからです」

「我々は過剰なデザインをしないように、またApp自体のためにデザインしないよう気を付けています。App自体のためにデザインすることは無意味であると考えています。そうしたデザインが、何かを生み出すわけではないからです。デザインは最終目標ではありません。我々がデザインしているのは、世界の人々に使ってもらうための製品なのです」

Majd Taby, Darkroom founder

「Darkroom」は今年で5歳になりました。Apple Design Awardを受賞したTabyとBergen Co.のチームは、自分たちが達成したことを誇りに感じており、今後の発展を楽しみにしています。「自分が何をしていて、それが誰のためなのかを理解し、そこに個人的な確信がある限り、そこに集中して突き進むだけです。それ以外のことは、後からついてくるはずです」とTabyは語ります。

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