概要
App Clipはアプリの軽量版で、アプリの機能の一部をユーザーが必要なときに、必要な場面で利用できるようにするものです。たとえば、ユーザーがApp Storeからコーヒーショップのアプリをダウンロードしたとしましょう。このアプリでは、デバイスを使ったドリンクの注文、お気に入りのドリンクの保存、ポイントやボーナスの獲得、特別オファーの受け取りなどができます。
それに対して、App Clipではドリンクを注文する機能のみを提供します。ユーザーがコーヒーショップを通り過ぎると、位置情報に基づいてSiriからの提案がデバイスに表示されます。提案をタップし、システムが表示したApp ClipカードでApp Clipの起動を確認すると、ユーザーはApp Clipを使ってその場でドリンクを注文できます。
ユーザーは、呼び出しを行うことでApp Clipを表示します。たとえば、位置情報に基づくSiriからの提案をタップしたり、App Clipコードをスキャンしたりすると、App Clipがすぐに起動して、ユーザーがよく行うタスクをすばやく実行できます。また、App Clipはタスクに必要な間だけデバイスに残ります。
ユーザーがApp Clipに対応する完全版アプリをインストールすると、App Clipは完全版アプリに置き換えられます。これ以降、アプリを呼び出すとApp Clipの代わりに完全版アプリが起動するようになり、ユーザーは完全版アプリの内部でApp Clipの機能を利用することになります。完全版アプリをインストールしない場合は、App Clipを一定期間利用しないと自動的にシステムから削除されます。
ここで、もう一度コーヒーショップのApp Clipについて考えてみましょう。App Clipの利用後、対応する完全版アプリが案内され、ユーザーがそのアプリをダウンロードしたとします。以降、ユーザーが位置情報に基づく提案をタップすると、App Clipではなく完全版アプリが起動するようになります。完全版アプリをインストールしない場合、以降提案をタップするとApp Clipが再度起動します。
優れたユーザー体験の提供
App Clipは、日常生活で頻繁に行うタスクをユーザーができるだけ迅速に実行するための、スムーズなユーザー体験を提供します。また、App Clipはホーム画面に表示されないため、完全版アプリと同じような管理は行いません。一定期間使われていないApp Clipはシステムによりデバイスから削除されてしまうので、いっそうスムーズなユーザー体験が重要になります。
デザインに関するガイダンスは、「ヒューマンインターフェイスガイドライン」を参照してください。
App Clipの開発を始める前に
高速起動、ユーザーのプライバシー保護、リソースの節約を優先するため、App Clipには制限事項があります。App Clipを開発する前に、まずApp Clipで利用できるテクノロジーを確認し、優れたApp Clipを提供するにはどの機能が必要かを見極めてください。それを踏まえ、下記の作業を実施する計画を立てます。
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アプリのXcodeプロジェクトおよびコードに変更を加える。たとえば、App Clipのターゲットを追加し、App Clipと完全版アプリの間でコードを共有する。
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App Clipを自社のWebサイトに関連付けて、システムがApp Clipを検証できるようにする。
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App Clipの起動体験をApp Store Connectで設計し、呼び出しに応答するコードを追加する。
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ユーザーがApp Clipを見つけ、起動する上でポジティブな体験を提供できるよう、App Clipコードを作成する。