デザインの舞台裏:Railbound

Apple Design Awardsを受賞したゲーム、Railboundのアートエレメントのコラージュ。

ポーランドに拠点を置くゲームスタジオAfterburnの創設者、Luke Spierewka氏は、クリエイティブでありながら、制限が生むメリットも理解しています。

「すぐにアイデアが理解できるような気楽なパズルゲームを制作しています。ただし、どれも限られたリソースを使わなければならないというところに、それぞれのゲームの難しさがあります」とSpierewka氏は説明します。

Railboundのパズルを始めたばかりの場面のスクリーンショット。プレイヤーは、線路を正しく敷いて、2台の列車をエンジンに接続させなければなりません。

AfterburnのRailboundは、線路を敷き、スイッチを操作し、徐々に複雑さを増すゲートやトンネル、駅の中を移動させながら、列車を正しい順序で連結させるゲームです。パズル自体は難しいかもしれませんが、パズルを動かすのは純粋に楽しいことです。線路を敷く仕組みはフィンガーペインティングのように簡単で、間違えて操作してもすぐに元に戻せます。一方、犬の車掌のコンビや、列車が誤った方向に配置されると頭上に現れるイライラ雲など、ゲームは細部までしっかりと作り込まれており、ヨーロッパのコミックにインスパイアされた、明るいカートゥーン風のスタイルですべて表現されています。

写真:Lukasz Spierewka(Apple Design Awards受賞ゲーム「Railbound」をリリースしたAfterburnスタジオ創設者)。

Railboundのインタラクションデザインは、スタジオのゲームをより遊びやすくしたいというSpierewka氏の意欲から生まれています。「インプットにはかなり気を使っています。Railboundでは、基本的に指一本で線路タイルを描けるようなシステムにしたいと考えました。その部分を楽しく、自由自在に操れるようにしなければ、人々のプレイ意欲を削いでしまうと思ったんです。これについては実現できたと思っています」とSpierewka氏。そして少し考えてから、こう続けました。「でも、さらにもっと直感的に使えるようにするにはどうしたらいいか、まだ考えています」。

Spierewka氏が妻のKamila氏とともに経営するスタジオでは、パズルの大きさにもこだわりました。「Stephen's Sausage RollやA Monster's Expeditionといったゲームでは、レベルをクリアするために、そのサイズこそが必要となってきます。これらのゲームのようなエレガントさを装うつもりはありませんが、パズルと空間にはできる限り制約を設け、必要なものだけ残すようにしています」。

Railboundの8つのカートゥーンキャラクターの画像。左上が、車掌服を着たゲームのマスコット犬コンビ。

この戦略はゲームのオンボーディングにも採用されています。このゲームのオンボーディングにはほとんど言葉が使われていません。これはAfterburnチームがこれまでのゲームで学んだちょっとした教訓に基づくものです。「(同スタジオの初期ゲームである)Golf Peaksのファーストバージョンでは、オンボーディングでテキストが使われました。第1ステージで紹介されるコンセプトは5つ。第2ステージにいくと『これは新しいタイルの種類ですので、どうにか対処してください』、そして第3ステージに到達すると『またもや新しいタイプです。なんとか対処してください』、といった風にです」とSpierewka氏は回想します。「それなのに誰もテキストを読んでくれなかったんです!スマホを渡した人は例外なく全員、オンボーディングのテキスト部分をタップでスキップしていました。かなりショックでした」。

誰もテキストを読んでくれなかったんです!スマホを渡した人は例外なく全員、オンボーディングのテキスト部分をタップでスキップしていました。かなりショックでした。

Luke Spierewka(Afterburn)

Railboundでは、Spierewka氏は完全に言葉を手放しました。「仕組みを分解して説明するためには、どんな方法がもっともシンプルかを考えました」。そこで出た答えが、そうした説明を初期のゲームプレイに組み込むことでした。Railboundの最初のステージでは、線路を配置する方法は1つしかありません。この段階でプレイヤーが負けることはありません。第1~3ステージでは、タイルを曲げたり回転させたりすることを学びます。「いくつかステージを進まないと、タイルの消し方すら教えてもらえません。その段階ではまだ必要ないからです。コンセプトはすべて適切なペースで導入し、必要になった時点で補強していきます」。つまりオンボーディングでも、「必要最小限」のアプローチが実践されています。

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デザインの舞台裏は、Apple Design Awardsの各受賞者がどのようにデザインを実践しているか、またその哲学を探っていくシリーズです。各ストーリーごとに、賞を獲得したアプリやゲームのデベロッパやデザイナーが、どのようにしてその素晴らしい作品に命を吹き込んだのか、その舞台裏を覗いていきます。

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