アプリを新しいマーケットに展開する
175地域を対象に40言語で利用できるApp Storeでは、世界中のユーザーがアプリを簡単に見つけてダウンロードすることができます。アプリをローカライズすれば、さまざまな文化や言語にアプリを対応させることができ、ビジネスを拡大するチャンスが生まれます。全世界のユーザーに向けてアプリを準備する方法と、新しいマーケットへの展開にあたって考慮すべき事項を紹介します。
175地域を対象に40言語で利用できるApp Storeでは、世界中のユーザーがアプリを簡単に見つけてダウンロードすることができます。アプリをローカライズすれば、さまざまな文化や言語にアプリを対応させることができ、ビジネスを拡大するチャンスが生まれます。全世界のユーザーに向けてアプリを準備する方法と、新しいマーケットへの展開にあたって考慮すべき事項を紹介します。
インターナショナリゼーション(ローカリゼーションを念頭に置いてアプリのコードやUIを構築するプロセス)は、世界中のユーザーに向けたアプリを構築する際の最初のステップとして不可欠です。Xcode、Foundation API、オートレイアウト、UnicodeサポートなどのAppleのパワフルなツールやテクノロジーを活用すれば、アプリに追加する言語を決める前の時点でも、複数の言語や地域に対応できるよう簡単に準備できます。
Xcodeでは、実行可能コードとは別になるよう、ユーザーに表示されるテキストと画像が自動的に分離されます。テキストや画像を別の言語に翻訳したら、これらのコンテンツをローカライズしたリソースの独立したファイルとしてアプリのバンドルに格納することで、再びアプリに統合できます。画像(画像セット、Apple Watchコンプリケーション、Apple TVの画像スタック、Sprite Atlases、記号セットなど)は、アセットカタログ内で直接ローカライズできます。また、ローカライズ済みのSF System Symbolsを使用して、カスタムシンボルの方向を定めることもできます。たとえば、アラビア語やヘブライ語のように右から左に書く言語に対してこれを行います。
Foundation APIを使用すれば、ユーザーに表示される値や動的に生成される値(日付、長さ、重さ、価格、通貨記号など)を、さまざまなロケールに合わせて適切に表現することができます。ユーザーインターフェイスの言語にかかわらず、どの言語でもテキストを入力でき、一度に複数の言語で入力できるようアプリを対応させてください。これにより、アプリのコンテンツをユーザーの希望する言語や形式で表示することができます。SwiftUIを活用すれば、アプリを簡単にローカライズすることができます。ユーザーに表示されるテキストはXcodeによって自動的に抽出され、デフォルトのレイアウトの動作もローカライズに対応しています。またオートレイアウトによる表示の寸法やレイアウトの自動調整、幅広いUnicodeサポートを活用したあらゆる言語テキストへの対応、CocoaとCocoa Touchのパワフルなテキスト処理技術による複数言語での表示、レイアウト、テキスト編集など、さまざまな機能を活用することができます。
iOSおよびiPadOSでは、デバイスでの設定言語とは独立して、アプリでの使用言語をユーザーが選択できます。これにより、多言語のユーザーがアプリの言語を簡単に切り替えられるようになっています。macOSでは、ユーザーはシステム環境設定の「言語と地域」セクションでアプリの言語を設定することができます。
人口、言語、購買力といったマーケットごとの統計情報は、アプリの適性やニーズが見込める地域をよりよく理解する上で役立ちます。どのマーケットにも、その地域のユーザー特有の傾向があり、好まれるアプリやカテゴリの種類が異なっています。たとえば、ゲームは世界中どこでも人気がありますが、特定の地域では、戦略系のゲームの人気が特に高いかもしれません。ビジネスの拡大を容易にするため、アプリのダウンロード数、販売数、使用状況、リテンション率などの指標ですでに高い成果を得ているマーケットと似た特性を持つマーケットを選ぶとよいでしょう。マーケットを選ぶ際は、アプリおよびアプリが提供する価値や機能が、マーケットのニーズにどの程度合っているかを評価してください。そのマーケットで未開拓のニーズを特定し、アプリを通してユーザーにユニークな価値を提供できる場合もあります。
アプリを世界中で配信しているものの、特定の地域に向けたローカリゼーションを行っていない場合は、プロダクトページ閲覧数、アプリユニット数、売上、アクティブなデバイス数などの重要なパフォーマンス評価指標について、対象地域をテリトリでフィルタして調べることができます。これにより、アプリが特定の地域でユーザーの関心を引いているかを確認し、その地域でローカライズするメリットがあるかの判断に役立てられます。たとえば、主に英語で提供しているアプリについて、ドイツのアクティブデバイスにおけるリテンション率やセッション数が平均より低い場合は、ドイツ語を追加することを検討できます。アプリの主な言語での理解度が比較的高いマーケットもあれば、相当なローカリゼーションの労力を必要とするマーケットもあることを考慮しましょう。アクティブなデバイス数、セッション数、リテンション率といった使用状況のデータには、診断や使用状況の情報をデベロッパに共有することに同意したユーザーのデータのみが含まれています。
App Analyticsの使用方法の詳細については、「アナリティクスで洞察を得る」を参照してください。
アプリやプロダクトページでは、すべてのマーケットで一貫した体験を提供することが理想的ですが、文化的背景に合わせて特定の要素を調整することが有益な場合もあります。たとえば、そのマーケットに特有のコンテンツや文化的イベント(祝祭日用の特別なコンテンツや地域のアートスタイルなど)を組み込むことができます。さらに、現地のポリシー、対象地域における規制事項、政治的または宗教的な側面などを考慮して、アプリがスムーズにユーザーに受け入れられるよう配慮するとよいでしょう。
Xcodeの「Export For Localization」機能を使えば、コードが参照するローカライズ済み文字列、stringsdictファイル、Interface Builderのファイル、ローカライズ済みアセットなど、ローカライズ可能なコンテンツをすべて自動抽出することができます。ソースコードを修正する必要がないため、翻訳作業を社内で行うか外部のローカリゼーションサービスを利用するかにかかわらず、翻訳作業が容易になります。アプリの体験を一貫したものにするため、必ず目的文字列もローカライズしてください。また、データの取り扱いをすべてのユーザーが明確に理解できるよう、プライバシーポリシーの翻訳も検討してください。
Appleのサービス:AppleのAPIを使用すると、Apple Pay、Appleウォレット、「Appleでサインイン」用のローカライズされたボタン、ペイメントシート、エラーメッセージなどを自動的に表示することができます。
オーディオビジュアルメディア:AVKitおよびAVFoundationを使用して、アプリ内のオーディオビジュアルメディアを別言語に対応させることもできます。これらのフレームワークを使用すると、字幕やクローズドキャプションの表示機能や、オーディオやビデオの代替トラックの選択機能を簡単に組み込むことができます。
ローカリゼーションサービス:外部のローカリゼーションサービスを利用してコンテンツを翻訳する場合は、その会社が特定の言語、文化、カテゴリを専門的に扱っているかどうかを調べ、翻訳の質の高さを確認してください。その会社にアプリやコンテンツに関する背景情報を提供することで、翻訳の効率を高め、翻訳エラーを最小限に抑えることができます。重要な情報を記したガイドラインを作成するとよいでしょう。たとえば、キャラクターの名前や性格を紹介した説明書、ジョークやユーモアの説明、よく使用される用語の用語集、訳文が使用される場所のスクリーンショットなどを提供すると効果的です。なお、機械翻訳だけに頼ることは避けましょう。機械翻訳では、文脈、文化的な配慮、言葉のニュアンスを考慮することができず、不正確で低品質な翻訳になる恐れがあります。たとえば、ホテルのアプリにある「Book」というボタンが、「予約」ではなく「本」と間違って翻訳されてしまうといった事態が起きる可能性があります。
Xcodeでテストプランを設定して、さまざまな環境設定で簡単にテストし、さまざまなテストケースを1か所で定義しましょう。これにより、サポートするデバイスや言語で、表示の欠落やレイアウトのオーバーラップ、右から左に書く言語に関連した問題が発生していないかどうかを確認することができます。Localization Screenshots機能を使用すると、テストで品質を確認した後、ローカライズ済みのスクリーンショットを生成して、チュートリアル、マーケティング資料、App Storeのプロダクトページで使用することができます。アプリをローカライズしたら、TestFlightを使用して、対象マーケットのユーザーグループにアプリを共有し、有益なフィードバックを集めてアプリの改善を図りましょう。
App Store Connectで、アプリの説明、キーワード、アプリプレビュー、スクリーンショットなど、アプリが対応している各地域向けのApp Storeのメタデータをローカライズしましょう。また、アプリ名を翻訳したり、各マーケットに適したキーワードをカスタマイズしたりすることで、各地域のユーザーにアプリの魅力をより効果的にアピールすることができます。App Store Connect APIを使えば、メタデータのアップロードや複数のローカリゼーションの管理を自動化することができます。
支払い処理はApp Storeが行うため、コンテンツを簡単に世界中のユーザーに届けることができます。ユーザーは、クレジットカード、デビットカード、キャリア決済、デジタルウォレット、App StoreおよびiTunesのギフトカードで、アプリやアプリ内課金の支払いをすることができます(地域によって利用できる方法が異なります)。
アプリやアプリ内課金アイテムの価格を決定する際は、App Store Connectで価格帯を選択します。価格帯には、それぞれの地域のマーケットに合わせて適切に調整された価格がすでに設定されています。自動更新サブスクリプションの場合は、利用可能なすべての通貨で、200の価格ポイントから各地域に合った適切な価格を選択することができます。
新たなマーケットでアプリを配信する際は、マーケティング戦略をその地域に合わせ、アプリとアプリが提供する価値をユーザーが簡単に理解できるようにしましょう。現地のユーザーの間で特に人気のあるソーシャルネットワークなどのマーケティングチャネルを把握し、それらを活用してアプリの認知度を高めます。各マーケットによってこれらのチャネルに大きな違いがある場合があります。スクリーンショット、バナー、広告など、マーケティングやユーザー獲得のために使用する資料もローカライズしましょう。
App Storeバッジ:アプリのダウンロードを促すため、コミュニケーションの中で「App Storeからダウンロード」バッジを使用してください。アプリが各地域のユーザー向けに提供されていることがわかるよう、ローカライズ済みのバッジが用意されています。バッジは、「App Storeマーケティングガイドライン」からダウンロードできます。
App Storeのマーケティングツール:App Storeのプロダクトページにつながるショートリンクや埋め込み可能なコードを生成し、アプリのアイコン、QRコード、App Storeのバッジを表示することができます。また、各地域でアプリを宣伝できるよう、バナーや画像といったカスタムのマーケティングアセットを作成したり、多言語のメッセージを事前設定することもできます。詳しくは「App Storeのマーケティングツール」をご覧ください。
Search Ads:App Store全体でアプリをプロモーションしましょう。「Today」タブ、「検索」タブ、検索結果の最上位、プロダクトページの下部に広告を表示することで、ユーザーにリーチできます。61の地域で利用可能です。100米ドル相当のクレジットを使用して無料でお試しいただけます。*詳細情報やデベロッパの成功事例をご覧ください。
*利用資格のあるデベロッパがApple Search Adsに登録すると、新規アカウントに100クレジットが追加されます。すべての利用規約が適用されます。
App Store ConnectのApp Analyticsでユーザーがどのようにアプリを見つけ、利用しているかを調べましょう。また、新しくアプリの提供を開始した地域の該当テリトリでそのデータをフィルタすることができます。App Storeの検索または閲覧中にアプリを見つけたユーザーの人数を調べ、初回ダウンロードに至ったビューの割合を測定します。ユーザーがその後もアプリを使用し続けているかどうかを調べ、インストール数、セッション数、アクティブなデバイス数も確認してください。その後そのデータを、アプリをより長期間提供してきた他のマーケットでのデータと比較します。これは、パフォーマンスの改善にマーケティング戦略の調整やアプリのローカライズ品質の向上などが必要かどうか、判断する上で役立つ場合があります。選択したマーケットで成果が出たら、新しいマーケットを見つけて追加のローカリゼーションを行い、さらに多くのユーザーに優れた体験を届けましょう。