ピアグループのベンチマークのインサイト基づいた対策

ピアグループのベンチマークでは、App Store上のアプリのカタログ全体から得られるデータに基づいて、アプリをカテゴリ、ビジネスモデル、ダウンロード数で分類し、プライバシーを保護しながら正確かつ関連性の高い方法で比較を行うことができます。こうしたインサイトを活用して、アプリのパフォーマンスを向上させる方法を紹介します。

ベンチマークのパフォーマンスチャートが表示されているApp Store Connect上のサンプルアプリ

仕組み

App Analyticsでピアグループのベンチマークを使用すると、App Storeで配信されている類似アプリのパフォーマンスと比較して、アプリのパフォーマンスを相対的に把握できます。コンバージョン率、1日後、7日後、28日後のリテンション率、クラッシュ率、有料ユーザー1人あたりの平均収益など、いくつかの主要な指標で結果を比較し、カスタマージャーニー全体にわたるアプリのパフォーマンスを把握できます。ピアグループのベンチマーク指標はApp Analyticsのアプリに関する標準メトリックスと同じ方法で定義され、週単位で表示されます。

関連性の高い比較

ピアグループは、アプリのパフォーマンスを最も関連性の高いベンチマークと比較できるよう、以下のようなさまざまな属性に基づき作成されます。

App Storeにおけるカテゴリ

App Storeのカテゴリが同じアプリは、同じピアグループに分類されます。自分のアプリが属しているApp Storeカテゴリごとにベンチマークを表示できます。ただし、そのピアグループ内に十分な数のアプリが含まれていて、個々のアプリのパフォーマンスを判別できない状況である場合に限ります。また、自分で割り当てたカテゴリ以外にアプリが分類されることはありません。アプリが含まれているApp Storeカテゴリは、App Store Connectのアプリ情報で確認できます。

App Storeにおけるビジネスモデル

同じビジネスモデルのアプリは、同じピアグループに分類されます。ビジネスモデルには、無料、フリーミアム、有料、ペイミアム、サブスクリプションがあります。アプリ内課金のあるアプリは、フリーミアムまたはペイミアムとみなされます。ダウンロード時に料金が発生するアプリは、有料またはペイミアムとみなされます。フリーミアムアプリまたはペイミアムアプリのビジネスモデルが、サブスクリプションであるとみなされるには、自動更新サブスクリプションによる収益が、アプリに対する収益全体の50%以上である必要があります。

App Storeにおけるダウンロード数

指定した週におけるダウンロード数に基づき、ダウンロード数が少ないグループ、中程度のグループ、多いグループのいずれかのピアグループにアプリが分類されます。アプリは、初回ダウンロード数と再ダウンロード数に基づき該当するグループに割り当てられ、ピアグループ内のほかのアプリと比較されます。

ベンチマークデータの確認方法を見る

分析に基づいた対処方法

改善したい具体的な指標がある場合は、プロダクトページの最適化、カスタムプロダクトページ、およびTestFlightなど、App Store Connectの便利なツールや機能を活用して対処できます。以下のような対処方法の検討をお勧めします。

コンバージョン率の改善

コンバージョン率は、ユーザーがApp Storeでアプリを閲覧した後にダウンロードした割合を把握するのに役立ちます。コンバージョン率が高いほど、効率的にユーザーを獲得できていることになります。たとえば、一定期間内にApp Storeにおいて100台のデバイスでアプリが閲覧され、25人がダウンロードまたは再ダウンロードした場合、コンバージョン率は25%となります。

プロダクトページの最適化のためのテストの設定

App Storeのプロダクトページで、異なるアプリアイコン、スクリーンショット、アプリプレビューを使用して結果を比較し、ユーザーへの訴求力が最も高いアセットを特定しましょう。オリジナルのページに加えて最大3つのバージョンのプロダクトページをテストできます。App Analyticsで結果を確認して、最もパフォーマンスの高いバージョンを特定し、App Storeで全ユーザー向けに表示できます。たとえば、アプリのアイコンを別のスタイルや色に変更してコンバージョン率が上がるかどうかを確認できます。

プロダクトページの最適化について詳しく

カスタムプロダクトページの作成

カスタムプロダクトページを使用すると、App Storeプロダクトページの追加バージョンを作成して、特定のスポーツ、キャラクター、番組やゲーム機能などアプリ内の特定の機能やコンテンツにフォーカスを当て、各ページ固有のURLを使って異なるユーザー層に提示できます。

カスタムプロダクトページについて詳しく

アプリやプロダクトページのローカリゼーション

アプリをローカライズすれば、さまざまな文化や言語にアプリを対応させることができ、ビジネスを拡大するチャンスが生まれます。さまざまな言語に対応し、異なる地域のユーザーにもアピールできるよう、アプリやプロダクトページのローカリゼーションを検討しましょう。

ローカリゼーションについて詳しく

有料ユーザー1人あたりの収益の改善

有料ユーザーとは、アプリまたはアプリ内課金を購入した、Apple IDに基づくユニークユーザーを意味します。有料ユーザー1人あたりの収益は、選択した期間において、アプリとアプリ内課金からの推定される収益合計金額をアプリの有料ユーザーの総数で割った額として計算されます。たとえば、一定期間のアプリの収益合計が100ドルで、アプリの有料ユーザーが100人である場合、有料ユーザー1人あたりのデベロッパ収益は1ドルになります。

価格戦略の評価

有料ユーザー1人あたりの収益がピアグループの値よりも下回っている場合は、アプリ内課金の価格を再度評価し、別のプライスポイントが適切かどうかを検討します。自動更新サブスクリプションの場合は、App Analyticsで地域別に結果を確認し、地域ごとに異なる価格を設定することがリピータ数やトランザクションあたりの収益の増加に役立つかを評価することをお勧めします。

自動更新サブスクリプションの価格管理について詳しく

パフォーマンスが高いソースの特定

App Analyticsを使って、有料ユーザー1人あたりの収益を最も多く生み出しているソースを特定し、そのチャネルにマーケティングとユーザー獲得の取り組みを集中させることができます。

アプリ内課金の価値のアピール

消耗型のアプリ内課金を提供するアプリやゲームの場合は、オンボーディング体験中にユーザーにアイテムを無料で提供することを検討します。ユーザーにアイテムの使い方を示し、アイテムの価値やメリットを理解してもらうことで、将来の購入に結び付く可能性があります。ヒューマンインターフェイスガイドラインを参照して、アプリ内課金の提供に関するデザインのベストプラクティスを確認することもできます。

アプリ内課金の提供に関するデザインのベストプラクティスについて詳しく

クラッシュ率の改善

クラッシュ率は、選択した期間において発生したクラッシュのセッションあたりの平均回数です。たとえば、選択した期間中にアプリでクラッシュが10回発生し、セッション数が100だった場合、クラッシュ率は10%になります。

潜在的な問題の特定

App Analyticsでは、クラッシュや削除に関するデータをプラットフォーム、アプリのバージョン、オペレーティングシステムのバージョンごとに確認できるため、潜在的な原因を特定して、ユーザー体験の向上することができます。より詳細なクラッシュログはXcodeで確認できます。

App Analyticsでのメトリックスの表示について詳しく

Xcodeでのクラッシュログの表示について詳しく

TestFlightを使ったユーザーフィードバックの収集

TestFlightを使用すると、アプリおよびApp ClipをApp Storeでリリースする前にユーザーをテストに招待し、有益なフィードバックを得ることができます。テスターのメールアドレスを使うか、パブリックリンクを共有することで、最大10,000人のテスターを招待することができます。

TestFlightについて詳しく

ユーザーリテンション率の改善

リテンション率は、一定期間内にユーザーがアプリを再び使用した頻度を測定したものです。具体的には、ダウンロード後の一定期間(たとえば30日間)にアプリを起動したデバイスの台数を、同じ日にアプリをダウンロードし、その期間内にアプリを起動したデバイスの合計台数で割った数値です。たとえば、5月1日にアプリが100台のデバイスに初回ダウンロードされ、5月8日に20台のデバイスで1セッション以上が引き続きアクティブである場合、7日後(5月8日)のリテンション率は20%です。

アプリ内イベントによるエンゲージメントの促進

アプリ内イベントを作成すると、アプリやゲームのコンテンツに関する最新アップデートをタイムリーにハイライトできます。ユーザーがiOSやiPadOSのApp Storeで直接アプリ内イベントを発見できるため、デベロッパはより広範囲にイベントを紹介し、リーチを広げられます。これにより、新規ユーザーの獲得や既存ユーザーへの情報提供、以前のユーザーの再エンゲージメントなどを促すことができます。

アプリ内イベントについて詳しく

アプリのオンボーディング体験の再検討

アプリの使い方やアプリが提供する価値が、オンボーディングフローの中で適切に説明されているかを確認します。

優れたオンボーディング体験のデザインについて詳しく

データプライバシー

Appleでは、Appleの各製品およびサービスにプライバシー保護機能を組み込んでいます。これは、App Store Connectにおけるピアグループのベンチマークについても同様です。ピアグループのベンチマーク値は、アプリの改善に役立つ、関連性のある比較情報を提供する目的でのみ使われます。Appleは、ピアグループのベンチマーク値を作成する際に、差分プライバシーと呼ばれる手法を使用します。これは、グループに含まれる個々の値を非公開のまま保つための最適な手法です。Appleは毎週、ピアグループ値の提供に先立ち、各ピアグループに一定数以上のアプリが含まれていることを確認し、各データポイントに一定量のノイズを加えることで、保護を強化しています。ピアグループには、カスタマージャーニーが類似しているApple独自のアプリも含まれているため、特定のカテゴリ、ビジネスモデル、ダウンロード数におけるパフォーマンスを包括的に把握するのに役立ちます。

ピアグループのベンチマークは、iOS 8、macOS 11、またはtvOS 9以降を搭載したデバイスから得られるApp Store、アプリの使用状況、トランザクションに関するデータに基づいています。ピアグループのベンチマークでは、アプリデベロッパとアプリの解析情報を共有することに同意したユーザーからのアプリの使用状況データのみが使用されます。

リソース