開発者インタビュー:Christopher Gray
2020年6月4日
アラバマで過ごした10代の頃、Christopher Grayは、地域のボランティア活動にも参加する成績優秀な生徒で、夢を諦めない少年でした。一方、不況で仕事を失ったシングルマザーの息子でもあり、高校時代、一家はホームレスになりました。
卒業が間近に迫り、Grayは大学進学の必要性を感じるようになりましたが、その費用は彼にとって、まったくの贅沢でした。自宅にインターネットがないため、図書館のコンピュータで、1回1時間という利用制限時間を守りながら、奨学金の情報を探しました。500ワードの応募エッセイを携帯電話で書くのはいつものこと。しかもスマートフォンではなく、小さなキーボードの付いた分厚い2008年モデルです。そんなことを7か月も続けていました。
「問題に気付いたので、それを解決しようとしたんです」。そう語る彼が今いるのはハリウッドのオフィス。そこには数名の同僚とMilkと名付けられた大型犬もいます。「祖母にいつも言われていました。『一生懸命やりなさい。周りで何があっても気にしちゃいけない。下を向いて、集中しなさい』とね」
初めて奨学金の小切手を受け取った時、彼は努力が報われたと感じました。最後の小切手が届く頃には、総額130万ドルを手にしていました。
彼はこの奨学金を使ってドレクセル大学で金融学と起業家精神について学ぶことにしました(4年間の生活費もまかないました)。しかし、そこに至るまでのプロセスは非常に面倒なものでした。そこで彼は思いました。なぜこんなにわかりにくいんだろう?これで大学へ行くことを諦める、それどころか出願すら諦めてしまう学生がどれだけいるだろう?
「学生を探している奨学金がたくさんあること、そして奨学金を探している学生もたくさんいることに気付いたのです」と彼は言います。
2015年、Grayは大学の仲間であるNick Pirollo、Bryson Alefと共にドレクセル大学でSchollyを立ち上げました。その目的は、学生と応募可能な奨学金をマッチングさせるというシンプルなものでした。年齢、関心領域、その他の人口統計学的な情報を入力すれば、Schollyが条件に合う候補を見つけてくれます。
このアイデアは、自分と同じ境遇の人を助けたいという願いから生まれた、とGrayは語ります。「私が奨学金を得られたのは、申請したのが私だけだったからです。奨学金の存在すら知らない学生が数多くいます」
さらに良いニュースが舞い込みました。Schollyの話はすぐに人気番組「シャークタンク(起業家がプレゼンをして「シャーク」と呼ばれる実業家たちから投資を勝ち取るリアリティ番組)」のプロデューサーたちの耳に入ったのです。その結果は放映された通り、Grayは60秒間のプレゼン後、あっという間にLori GreinerとDaymond Johnからの出資を獲得。その影響は番組外にも波及しました(Greinerは、Grayが希望した4万ドルを何も聞かずに提供しました。「収益化の方法はこの際、どうでもいいわ」という彼女の言葉に出演者たちはヒートアップ。ちょっとした言い争いが起き、何人もの「シャーク」たちが怒ってスタジオを出て行くという展開になりました。)
「学生を探している奨学金がたくさんあること、そして奨学金を探している学生もたくさんいることに気付いたのです」
Scholly Searchは、シンプルなアイデアが爆発的な成功を収めた典型例です。現在までに、およそ300万人のユーザーが1億1,000万ドル以上の奨学金を手にしています。
俳優で活動家のジェシー・ウィリアムズは、Scholly Searchの取締役の1人です。またアーティストのチャンス・ザ・ラッパーもシカゴでのプロジェクトに出席しました。会社はフィラデルフィアからカリフォルニアに移転し、山の眺望に恵まれた広いオフィスとなりました。
Grayは語ります。「数字的にもすごいのですが、同じくらい大きなパワーを持つのは、例えば入学に必要な3,000ドルを手に入れた人々のストーリーなんです。旅行する時、私はいつもSchollyのトレーナーを着ていきます。見た人は近寄って来て『おぉ、君がSchollyなんだね』と声を掛けてきます。ChrisではなくSchollyと呼ばれるんですよ。そして皆がそれぞれのストーリーを語ってくれます。そんな経験ができるなんて、本当に感動的です。以前、ホームレスだったことを思うとね」
まだ20代半ばでありながら、Grayはその社会的起業家精神を認められ、フォーブス誌の「30歳未満の30人」に選出されたほか、オプラ・ウィンフリーの「SuperSoul 100」(ウィンフリーのお気に入りの人物リスト)にも選ばれました。さらにオバマ財団の「My Brother’s Keeper」サミットで講演を行い、「2018年Smithsonian American Ingenuity Award(スミソニアンが選出するアメリカの才能)」を受賞しました。
ここ数年Grayは、Schollyをフルサービスの教育Appに進化させるプロジェクトに取り組んでいます。「Scholly Math」はAIを搭載したスタンドアロンAppで、複雑な問題を解く手助けをします(もちろん、そのプロセスも表示されます)。また「Scholly Editor」はウェブベースの校正Appです。「初めはエッセイ執筆の支援ツールとして製作しました。ですが多くの子どもたち、特に環境が整っていない学校の生徒たちが、成績を上げたり、英語を学んだりするのに使っています」とGrayは語ります。
彼が何より望んでいるのは、学生や生徒たちが、環境によって一度は諦めかけた夢を叶えられるよう手助けすることです。
彼は言います。「自分には、こんな風に良いことが起きました。だから今度は私が、助けが必要な人たちを支援していきたいと思っています」
App Storeより転載